「ペスと駆け巡った日々」

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相続でそれなりに大きな家が手に入るとわかったら、普通は嬉しいものなんだろうか。  少なくとも我が家についていうなら、全く嬉しくはなかった。それどころか、厄介なものを遺してくれたな、という思いのほうが大きかった。  私たち…

「その鍵の重み」

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ご年配でありながらとても姿勢が良く、所作の綺麗なご婦人。  それが、お客様の第一印象でした。        お子様は独立して遠方におり、ご主人は亡くなられている。  この家を売るのは、そろそろ老人ホームにでも入居しようと…

「家の売却が繋いだ縁」

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我が家をじっくりと眺めて、ゆっくりと息を吐く。  この家には俺の全てが詰まっていると言っていい。北欧テイストの外装に内装、いわゆるスウェーデンハウスというのとはやや異なるが、俺好みのナチュラルな質感で統一してある。  も…

「きずくこと」

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俺は今年、30歳を超えた。 正直言うとこの年になるまで遊びほうけてた。まあそれなりに働いてもいたけど、それ以上に家には帰らなかった。父親が早くに死んでいたせいもあって、母親には相当の苦労を掛けてたんだと思う。でも、俺は俺…

「大切な家族」

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「家を売る」という選択をする人には、大体ざっと二種類いると思うのです。 何かやむを得ない事情で、どうしてもそこに住めなくなってしまって、悲しい理由によって家を売る人。 もうひとつは、何らかのうれしい理由により家を売る人。…

「欠けたピース」

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真夜中に響き渡るサイレンの音。ざわめく人の話し声、泣き叫ぶわが子の悲痛な叫び声。そんなものが全部、まるで違う次元のことのように俺の耳には聞こえていた。 俺と子供二人は救急車に乗せられ、ちかくの病院まで緊急搬送される妻に付…

「桜の木の思い出」

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それは綺麗に晴れた春の日の事だった。 妻が亡くなって数年が経ち、娘や息子もずいぶん前に巣立っていってからは帰省するのも盆、正月くらいで、なかなか家に戻ってくることもなくなった。かつてはきれいな一軒家だったが、俺の歳と一緒…

「妻の一言がきっかけ」

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家を売る――そう決めた時、自分の中で何かが変わったような気がした。 子供が小さかった時に田舎に買った一軒家。交通の便は悪かったが、地域のつながりが密接で子育てにもいいと思い思い切って引っ越した。 家が完成されていく姿を、…

第1話 成年後見制度 (宅地建物取引士 奈々美の奮闘記)

短編小説
「おはようございます」  ここは東京都八王子市 勤務する『不動産ステーション』に出社した若葉奈々美は、いつものように元気よく挨拶する。けれどオフィス内は静かで、なんの返事も聞こえてこない。まだ誰も出社していなかったのだ。…

『家を受け渡す幸せ』

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道を駆けてゆく子供たちの姿。元気のよい歓声。 思えば、そうした光景を見つめる妻のどこか寂しげな眼差しが、家を手放す切っ掛けとして決定的なものだったのかも知れません。 リタイア後には、都会のほうへ住居を移そう。 そんな話は…