古い時代から放映しているアニメを見ると、住宅の歴史について知ることが出来て、なかなかに面白いです。例えば国民的アニメとも言われる「サザエさん」は平屋に住んでいる様子ですし、「ドラえもん」では出て来る家が2階建てです。原作者の活躍した時代を考えると、サザエさんの方が古い様子なので、平屋というのも納得が行きます。
ところで、今の時代には都市部を中心として3階建ての住宅が多くなっています。もちろん3階建ての住宅は、サザエさんにもドラえもんにも出ては来ない模様です。と言うのも、3階建て住宅の普及は比較的最近になってから普及したからです。
それでは、3階建て住宅にはメリットがあるのでしょうか。
ここでは3階建て住宅に焦点を当てて、普及した背景から、メリットや注意点になどついて解説したいと思います。
3階建て住宅普及の背景
まずは3階建て住宅が普及した背景について述べたいと思います。
尚、ここで述べる状況は全国的な傾向とは少し違い、東京都内をメインとした現象について取り上げます。
地価の値上がり
地価は変動があるものですが、今を去ること約30年前のバブル経済の時代は、非常に地価が高騰したものでした。その時代には庭付き一戸建ての住宅が1億円とも言われ、当時の宝くじの当選金額が1億円程度だったこともあり、「1億当てても家を買って終わり」と言う様な自虐的な冗談も言われた程でした。
ちなみに、当時の話を思い出してみると、相続税を納めるために不動産を処分した…などのエピソードもあった様子でした。
ところで、その様な時代背景の中で建築基準法が改正され、一定の技術基準に適合することを条件として、木造3階建ての準防火地域の建設が可能となりました。そして、これを皮切りにして、木造3階建てに関する法整備が整い、今の様に3階建て住宅が建てられる様になりました。
建築技術の向上
3階建て住宅の普及においては、建築技術の向上がバックグラウンドにあります。
例えば、今の木造3階建て住宅は集成材や合板が構造部分に多用されています。そして、これらの部材は寸法だけでは無く、耐用年数なども向上しています。例えば、集成材に関して言うならば50年以上の耐久年数があるとの話もあります。
また、設計や構造計算などもコンピューターで可能となって来ました。今では図面にしても、構造計算にしても、質の高い仕事が可能で、建築技術の向上に寄与しています。
その他にも、部材製作などの分野においてもコンピューター化が進み、バラつきの少ない加工が出来る様になった背景もあります。
3階建て住宅が普及した背景には、この様なテクノロジーの進化があったのです。
3階建てとするメリット
次に、住宅を3階建てとするメリットについて解説したいと思います。3階建ての住宅は都市部に多くありますが、このメリットを見るならば、どうして都市部にマッチして来たかが分かると思います。
土地の有効活用
まず最初に挙げられるのが「土地の有効活用が可能になる」という点です。
前にも挙げた通り、東京の不動産は驚くほどに高額な物でした。そのため、一般の人には手が届かない物になっていました。特に土地の値段は非常に高く、土地の有効活用が必要だったのです。
そんな中で3階建て住宅が登場したのですが、3階建てであれば土地の面積が狭かったとしても、床面積の広い建物を建てることが可能になります。つまり、狭い土地の活用が可能になるのです。
ちなみに、八王子の地価は概略で坪単価で45万円程度です。これが例えば30坪とすると土地代で1350万円となりますが、3階建てにすると単純計算で2/3の土地で済むので、20坪となって、950万円となります。
展望が良くなる
次に挙げられるのが展望が良くなる点です。3階のベランダは広く見渡すことが出来るので、気分が良いです。
今の住宅は家と家が隙間無く建っていることもあり、特に低層階の場合には、外の景色が隣の家の外壁…であることも、結構多いと思われます。
しかし、住宅を3階建てにするならば、3階からの展望が良くなり、2階建て住宅と差が付きます。
3階から見下ろす街は、平屋や2階から見る外の景色と、やはり全く違います。その点において、平屋や2階建てよりも快適であると言えるのです。
2世帯で住む場合にプライバシーを保ちやすい
最近は高齢化が進み、お年寄りの比率が高くなっています。しかし、お年寄りがひとり暮らしをしている例は非常に多く、問題となっています。
そんな中、1軒の家に2世帯で住むケースが増えていますが、この時に家をどの様に使うかが難しいです。特にプライバシーの確保に関して、一層難しくなることと思います。
その点、3階建ての家ならばプライバシーも守りやすいです。
例えば、2階にリビングを置き、1階に親世帯の部屋を置き、3階を子供世帯の部屋とするならば、親世帯と子世帯の距離を程良く保つことが可能となります。
トータルの費用が安くなる場合がある
一戸建て住宅の価格は土地と建物の合算と言うことが出来ます。そのため、地価が高い場所では土地の広い分だけ価格が上がってしまいます。
しかし、3階建て住宅とするならば、同じ床面積でありながら敷地面積を少なくすることが可能です。そして、その分だけトータルの価格を抑えることが出来ます。
先に八王子の街の地価の例を挙げましたが、30坪を20坪に抑えることによって、1350万円が950万円にまで下がったことは、大きなコストメリットと言えると思います。この400万円の差は、やはり大きいです。
構造計算によって安全が確認されている
昔の住宅建築は今の様なコンピューター化がされていなかったこともあり、強度について数値で計算されることは少数派だったと言うことが出来ます。
しかし、今では建物の強度に関してもコンピューター化が進み、建物の強度を数値的に確認することが出来る様になりました。つまり、構造計算が一般でも出来る様になったのです。
これは建物に地震や台風などが襲い掛かった時に、どれくらいまで耐えられるかを、計算でシミュレーションした物であり、3階建ての住宅の場合は必須の物となっています。
つまり、数値上ではあっても、建物の安全性はしっかりと確認がされているため、安心して使うことが出来るのです。
大雨の時には3階から脱出も可能
最近の異常気象の影響を受けてか、今の自然災害は以前には見られなかった様な物となっています。中でも、特に変わったのは「大雨の規模と回数が増えた」と言うことが出来るでしょう。
実際、ここ数年の間でも日本の各地において、河川の氾濫が見られますし、都市部ではゲリラ豪雨の危険性も語られます。
ところで、ケースにもよりますが水害において、3階建ての家は有利と言うことが出来ます。と言うのも3階に避難が可能だからです。
災害は侮れる物ではありません。そのため、普段から対策を取っておくべき課題です。そして、3階建ての家は水害対策の1つとして有効な手段なのです。
3階建てにする上での注意点
住宅を3階建てにするプランニングはメリットが多いのですが、注意点も、やはりあります。
良い家を造るためにはメリットだけでなく、他の要因も冷静に見る必要がありますので、しっかりと押さえておきましょう。
高さ制限
街によっては建築する建物に高さ制限を設けてるところがあります。これは、建物の高さの制限となるため、3階建てにする場合には、建物全体の高さを考慮しなければなりません。
ですから、ケースにもよりますが、3階の部屋の天井などについても工夫が必要になる場合もあります。
通風や採光に気をつける
建物が高くなって行くと、通風や彩光が不利になって行く場合があります。例えば、商業地の密集した雑居ビルを考えてみましょう。その場所は風通しも悪く、階によっては日当たりも悪いです。これは建物が高くなり、密集すると見られる現象とも言えます。
3階建て住宅を考える場合も、この問題をクリアしなければなりません。屋根の形や窓の向き、そして大きさを十分に検討し、風通しが良くて明るい部屋を造ることが大切です。
尚、窓は大きいと開放的になりますが、あまりに大きくしたり、1方向に偏らせたりすると建物そのものが弱くなる場合もあります。そのため、専門家と良く相談することが大切です。
階段まわりに注意が必要
階段は転落の危険性を伴うことから、家を考える上では非常に重要な課題となります。特に小さな子供やお年寄りがいる世帯の場合には、手すりなどの設置だけでは無く、階段幅や勾配なども検討するべきです。
また、階段にはストレートのパターンの他にも、折れ曲がる物など、いくつかの納まりがあるので、家族に合わせて作ることが大切となります。
尚、階段はスリップが危険なので、滑り止めを設置する必要もあります。
避難設備を忘れない
住宅において避難設備は非常に大切な物です。マンションなどの場合は非常階段の他、災害時にはベランダからでも脱出が可能となっています。と言うのも、マンションの場合は玄関まわりで火災が起こった場合はベランダしか脱出経路が無いからです。
ところで、3階建て住宅も避難設備が非常に大切となります。と言うのも、例えば2階にキッチンがあり、そこから出火した場合は、3階からの脱出経路が絶たれるからです。そのため、3階から直接屋外に脱出する手段が必要となります。
そのため、避難ハシゴなどの設備を忘れてはいけません。また、いつでも使うことが出来る様に配置することも非常に大切です。
まとめ
3階建て住宅について、建築するメリットや、検討する上での注意点などを解説して来ました。3階建て住宅の持つ土地の有効活用などが、イメージ出来たことと思います。
また、八王子の街をイメージする時、3階建て住宅の有用性も分かったことと思います。
3階建ては土地活用と安全性のバランスの取れた住宅と言うことが出来ます。家づくりの際には、計画に入れることをおすすめします。
参考
八王子の地価