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家づくりの知識

より良いバリアフリー住宅とするために。必要なリフォーム箇所と予算について一挙解説

日本社会の高齢化は「待った無し」の状況と言って良く、それだけに対策が求められます。
それは不動産においても同じことが言えて、対策として、住宅のバリアフリー化が進められていることは、周知のことだと思います。

ただ、建物のバリアフリー化を考える場合、その「質」を考えることも忘れてはいけません。
と言うのも、質が悪いバリアフリーは、生活する人の住み心地にダイレクトに影響を及ぼすからです。

ところで、住宅取得を考える場合、中古住宅を選ぶ方がコスト的にメリットがある方が多いです。
そのため、介護住宅の取得を、中古住宅をリフォームして対応することも良策と言えます。

しかし、住宅の、「どの部分をどの様にリフォームするか」と、「どれくらいの予算を見ておくべきか」については、判断が難しいことでしょう。

そこで、ここでは住宅の介護リフォームに焦点を当て、変更箇所を予算について解説したいと思います。

リフォームで対応することのメリット

介護住宅を取得する方法として、新築で対応する方法と、中古住宅をリフォームする方法があります。
確かに、新築で取得するのも良いのですが、リフォームで対応する方に軍配が上がる点がやはりあります。

ここでは、バリアフリー住宅をリフォームで取得するメリットについて紹介します。

取得費用を抑えられる

まず挙げられるのが、何と言っても取得費用が抑えられる点です。
新築は確かに設備などが新しいため、非常に魅力的なのですが、やはり高額になってしまいます。

その一方で、中古住宅であれば、仮に築浅であっても、価格はグンと下がり、取得しやすいです。

そのため、介護用の設備に予算をまわし易く、質の高い介護住宅の検討も容易となります。
住宅設備は意外に高額で、介護に便利なハイスペックの設備は値段も高めです。
そのため、建物の価格を抑えた方が、上質のバリアフリー住宅を造りやすいのです。

打合せがしやすい

住宅の打ち合わせは図面などベースにすることが多いです。
そのため、購入する側がイメージがしにくく、適切な仕様が作れないケースもあります。

確かに、打合せのツールとして3Dのパースなども作ることが出来るでしょうが、それでも実際の使用感まではイメージしにくいです。

その点、中古住宅であれば、現場を見ながら相談が出来ますので、話も早いですし、具体的な案も出やすいです。
例えば、階段部分の手すり設置の場合、設置する高さなども出しやすいです。

介護リフォームの箇所と予算

次に、介護リフォームの箇所と予算について取り上げてみましょう。
ただし、以下に挙げる変更箇所は、あくまでも「代表的な箇所」です。
実際に検討する場合は、生活する本人の身体能力や体格などを総合的に検討し、仕様を決める必要があります。

段差解消

段差解消はバリアフリーの基本とも言えます。
段差があると転倒のリスクが高くなりますし、車いすの場合には乗り越えることが大変だからです。

そのため、生活範囲全体をカバーする範囲の段差が解消されるべきです。
具体的には、玄関やトイレ、浴室などの段差が対象となります。

特に在来工法での建物には段差解消が進んでいない物がありますので、改装が必要です。
尚、予算ですが、どの様な段差や施工方法であるかによっても違いますが、概算で2~15万円程度となります。

手すり設置

手すりの設置もバリアフリーを考える上で欠かすことは出来ません。
ただ、手すりは使用者の体格や握りやすさなども考える必要もあるので、検討をなおざりにしては行けません。

尚、手すりは握った感触なども大切なのですが、強度についても注意が必要です。
手すり設置の予算ですが、長さなどにもよりますが、10万円~20万円が1つの目安となります。

浴室交換

浴室は滑りやすいので、転倒の防止を考えなければなりません。
そのため、段差の解消や滑り止め、そして手すりの設置が必要となります。

ところで、中古住宅の古い物件で在来工法の家の場合、浴室がタイルで仕上げていたり、段差が解消されていないケースがあります。

その場合だと、やはりバリアフリー上は好ましくありません。やはり、リフォームが望まれます。

今のユニットバスには手すりなどが標準的に設置してありますし、段差も解消されています。
また、グレードは高めになりますが、滑りにくい床を採用している物も出ています。
尚、予算ですが、ユニットバスへのリフォームが、大体120万円から150万円くらいとなります。

トイレ改装

トイレの改装もバリアフリーを考える上で必要です。
特に、和式便器から洋式便座への変更は必須とも言えるでしょう。
最近のトイレは、蓋の開閉も電動で出来るタイプがあります。
かがむ動作が難しい場合など、おすすめの商品です。

また、トイレのスペースの拡張も良策です。と言うのも、将来的に車椅子の使用を考えるならば、トイレのスペースに余裕が必要となるからです。

尚、トイレのリフォーム費用ですが、和式から洋式への変更が30万円~40万円程度から、スペースの拡張が20万円から30万円程度となります。
ただし、トイレは配管やコンセント工事も必要となるため、しっかりと確認する必要があります。

玄関リフォーム

玄関リフォームのバリアフリー化は、メインとなるのがスロープの設置や玄関ドアの変更となります。
ただし、スロープにしろ玄関ドアにしろ、変更には注意が必要です。

まず、スロープの設置ですが、強度や傾斜、そして幅などの他にも、防滑についても検討する必要があるからです。
その部分がなおざりだと、車いすで上る時に大変だったり、思わぬ転倒のリスクが出て来るからです。

また、玄関ドアに関しても注意が必要です。
玄関ドアは開き戸から引き戸に換えることが望ましいのですが、引き戸は引き込み部分が必要であるため、十分なスペースが必要だからです。

しっかりと確認しましょう。
尚、費用ですが、スロープ設置が20万円くらい、ドアの交換が30万円~40万円となります。

更にやさしい家にするために

介護リフォームを更にレベルアップさせ、スケルトン化のレベルまで考えると、更に優しい住宅が見えて来ます。
これらは価格的に数百万円から一千万円を超えるケースも出て来るかも知れません。
しかし、長く住み続けることを前提にするならば、「良い投資」と言うことも出来るでしょう。

防滑化

住宅内での転倒は、時として骨折などの大ケガにも繋がるので、十分に気を付ける必要があります。
そのための手段として段差解消があるのですが、段差解消だけでなく、防滑に関しても検討するのがおすすめです。

防滑の手段としては、リビングや浴室など、部屋によってフロア材を工夫しなければなりませんが、家屋内の転倒事故のリスクを抑えることが出来るため、メリットは大きいです。

コンセント位置の変更

コンセントの位置が良く無いと、「しゃがむ動作」「かがむ動作」が増えてしまうため、使い勝手が悪くなってしまいます。

その様な場合には、コンセントの位置を変更するのもおすすめです。
コンセント位置は、多くが足元にありますが、それを数十センチ上に移動させることで、しゃがんだり、かがんだりする動作が少なくなり、使い勝手も良くなります。

断熱化

住宅の断熱性能が十分でない場合、部屋によって気温が違って来る場合があります。

例えば、冬場などは暖房を入れるリビングは温かい一方で、浴室の脱衣所は寒く、それでいて浴室内は気温が高い状態です。

その場合、リビングから脱衣所、そして浴室から浴槽までで、急激な温度変化が何回も発生することになります。
この状態はヒートショックなどの健康被害を受けるリスクが高くなるため、好ましくありません。

しかし、住宅の断熱性能を上げてやれば、建物内の気温の変化が少なくなります。
そして、健康被害のリスクも小さくなります。
脱衣所の寒さが断熱によって緩和されれば、室温差が少なくなり、ヒートショックの発生リスクも小さくなります。

カビ対策

室内の湿度が高くなったり、結露などが頻繁に起こると、カビの発生リスクが高くなります。
当然ながら、カビの発生は、健康上、好ましくはありません。

カビ対策としては、湿気の調節と、換気を確実にすること、そして結露を防ぐことが挙げられます。

この内、湿気対策としては、内装のレベルであれば内装材に調湿機能のある壁クロスを使うことや、珪藻土や漆喰などの壁材を使う方法があります。
また、古い住宅であれば換気システムが良く無いケースもあるので、換気システムを整備することも良案です。

また、結露対策としては、サッシの交換なども効果的です。以前のアルミサッシはアルミ材が露出していましたが、今は樹脂でカバーしているため、結露しにくくなっています。

介護リフォームの注意点

最後に、介護リフォームの注意点について、いくつか述べたいと思います。

介護リフォームは「人が相手」のリフォーム

まず注意点として挙げられなければならない点は、介護リフォームは「建築の問題」では無くて、「人を相手にする」リフォームである点です。

と言うのも、バリアフリー住宅を見てみると、立派な設備は付いていても、それが使用者にマッチしない例が意外にあるからです。
これは、もしかすると建築物としては一流かも知れませんが、「目的とすべきこと」を忘れている…とも言えるかも知れません。

まずは「人を見る」ことから始めるプランニングが必要です。

身体を動かす機会を奪わない

今の介護設備は非常に優秀です。
しかし、あまりに多用しすぎると、使用者の身体を動かす機会までをも奪ってしまう可能性も出て来ます。
そうすると、運動機能が更に低下するリスクも出て来るため、返って良く無い結果を生み出し得ます。

使用者の動ける範囲を考え、生活の中での運動の機会を奪わないことが大切です。

まとめ

介護リフォームについて、必要な箇所や費用などについて紹介して来ました。概略かも知れませんが、イメージが出来たことと思います。

そうは言っても、介護に関しては使用者の使い勝手などを無視しては、良いリフォームにはなりにくいです。
そのため、実際に使用する人と話すことが重要です。
より良い住宅とするためにも、しっかりと確認して、使い勝手の良い家を造りましょう。