窓の種類と役割について聞かれた場合、多くの人がスムーズには答えられないと思います。と言うのも、窓は住宅には絶対に着いている物であり、あまりにも身近だからです。生活空間の中にあるもので、身近過ぎる物について聞かれた場合、話に詰まることもあるかと思いますが、窓についても同じで、話に詰まることもあるでしょう。
では、改めて考えると、窓はどの様な物なのでしょうか。
実は窓には意外に多くの種類があり、それぞれに特徴があります。
そこで、ここでは住宅用の窓の代表的な物を取り上げ、その特徴などについて解説したいと思います。
窓の役割
窓の種類について述べる前に、改めて窓の役割について復習したいと思います。
展望のため
窓の第1の大きな役割は展望です。
家に入って四方が壁になっていると外が全く見えません。天気はどうか、外の様子はどうかも分からないのです。外の様子が分からないのは非常に困ります。窓は外を知る上でも大切です。
ただ、もう少し踏み込むならば、展望は精神面で意外に重要です。と言うのも、部屋に開放感が無い場合、精神的にあまり良くないからです。仮に窓が無い狭い部屋だと独房の様な状態にもなり、気分も滅入ってしまいます。
しかし、窓が適切に設けられ、外を見渡すことが出来れば気分も良くなります。精神的な安定のためにも、展望は大切なのです。
採光のため
窓は採光のためにも大切な部分です。窓から入る日差しは気分が良い物です。
確かに、明るくするだけのためであれば、窓では無くて照明器の様な物でも足りると思うかも知れません。しかし、照明器の作り出す人工の光と外からの光は感触が完全に違います。そして、心地良い光を取り込むためにも、窓の存在は非常に大切になるのです。
通風のため
当然ですが、窓は「開けること」が基本的に可能です。そして、窓を開ければ風を部屋の中に通すことが可能です。
居室内の通風は実は意外に重要です。と言うのも、適度に風を通さないと、湿気が部屋に溜まってしまったりするからです。
しかし、風を通すならば、その様な湿気も飛んで行き、部屋の中も快適になります。通風は大切なのです。
換気のため
窓を開ければ室内の換気も可能となります。
居室内は空気がどうしても汚れてしまうので、適度な換気が必要となります。室内の空気は人の吐く二酸化炭素などでコンディションが悪くなってしまうのです。
しかし、窓を開ければ換気が出来るので、空気のコンディションも回復されます。
窓の種類と特徴
次に、主な窓の種類と特徴について挙げてみましょう。
引き違い窓
最も一般的な窓の形態で、左右にスライドさせて開閉させるタイプの窓です。
特長としては、比較的大きな開口部に取り付けることが可能なので、大きな窓とすることが出来ます。そのため、例えばテラス部分などに取り付け、開放的にすることが可能です。
ただし、サッシを左右に開閉する都合から、開けることの出来る幅はサッシ枠に対して約半分までしか開けられません。
縦すべり出し窓
このタイプは窓全体が片側を軸心として左右にスライドしながらドアの様に開閉する窓です。窓全体が開くため、風を通すのに向いています。
ただ、この窓は風を入れやすい構造なのですが、その分、風にあおられやすくもあります。
横すべり出し窓
横すべり出し窓は、窓の上を芯にして上下にスライドしながら前後に開閉する窓です。ちょうど縦すべり出し窓を横にしたイメージになります。
この窓は開けると、戸が庇の様になるため、雨が室内側に入り込みにくいです。
FIX窓
窓枠にガラスが入っているタイプの物で、開閉しないタイプの窓です。主に展望や彩光のために設けられます。
上げ下げ窓
窓を上下にスライドさせて開閉するタイプの窓です。上下にスライドさせることもあり、左右の幅いっぱいを開くことが可能です。
ルーバー窓
窓の戸をいくつかの部分に分け、それを前後に開閉させるタイプの窓です。小さな開口がいくつかに分けられるため、物を出し入れする窓としては使えませんが、通風には非常に向いています。
窓に求められる性能
さて、窓には共通して求められる性能がいくつもあります。その内のどれかが欠けていると、窓としての機能が果たせません。
では、窓にはどの様な性能が求められているのでしょうか。
ここでは窓に関係する代表的な性能を取り上げて解説したいと思います。
気密性
気密性は空気の漏れを防ぐ性能です。この性能が低いと窓を越して空気が漏れてしまい、その部分から熱の移動が起こり、寒くなったりします。ですから、省エネを考えるのであれば、気密性に優れた窓を選ぶことが重要となります。
また、この性能は窓の遮音性などにも影響します。と言うのも、開いた隙間の空気を通して音が漏れることもあるからです。
水密性
水密性は窓枠部分からの水漏れをどれくらい抑えられるかの性能です。この性能が低いと、台風が来た場合など、室内に雨水が侵入することもあります。
さて、水密性を実験で確認する場合は、単に窓に水を掛けて侵入の状況を見る訳ではありません。風をシミュレートしながら窓に圧力を掛けながら水漏れの状況を調べます。
これは、水の掛かる時が台風などの発生がメインとなるため、風の再現も同時にしなければならないからです。
防犯性
窓は窃盗などの侵入犯罪に最も狙われやすい部分です。以前はドアも狙われやすかったのですが、ピッキングなどのカギの不正解錠が難しくなったこともあり、窓の狙われる比率が増えて来ています。
そのため、窓にも様々な防犯の工夫がされる様になりました。
例えば、ロックを二重にすることや、窓ガラスを貫通しにくい物になったこと、あるいは内窓の設置により、破りにくくなった物などがあります。
防火性
建物は火に強くなくてはいけません。それは、出火した建物そのものを燃やさないための目的と、隣の家に火が移ることを防ぐ目的があります。そして、窓にも火災時の防火性能を求められます。
窓の防火は一般的には網入りガラスの設置による物が多いです。
防音性
建材に防音性を持たせることは非常に大切です。と言うのも、防音性が無いと、屋外の騒音が居室内に入って来るからです。例えば、自動車の騒音などが屋内にまで入って来る場合、住環境は悪化します。
また、仮に室内の音が外に漏れる場合はプライバシーの保護に問題が出て来ます。室内の会話が屋外にまで聞こえてしまうのは好ましくはありません。
窓の防犯性は設置するガラスやサッシによって決まります。今のガラスは防音性に優れるタイプの物もありますし、サッシは気密性の高い物も出ています。そのため、昔の窓よりも今の窓の方が、防音性は高いです。
断熱性
窓の断熱性は非常に重要です。窓は熱の移動の最も激しい部分ですが、それだけに窓部分での熱移動の遮断は、窓選定にまで関係する課題にもなります。
ちなみに、窓の断熱性が十分で無い場合には、家の光熱費が上がってしまうデメリットが発生してしまいます。断熱が不十分の場合には、冬の寒さが室内の気温を下げてしまい、暖房費が増えてしまいます。その一方で、夏の場合には屋外の気温上昇の影響を受けてしまい、エアコンの使用量が増えるからです。
窓と建物の関係
窓は建物の開口部ですが、開口部は状況によっては建物全体に影響する場合もあります。つまり、窓の設置の状況によっては、建物全体の性能が落ちる場合もあるからです。では、窓は建物にどの様な影響を与えるのでしょうか。
強度との関係
窓が建物の強度に影響する、と聞くと驚く人もいるかも知れません。しかし、窓の設置の状況によっては建物の強度性能、例えば耐震性や耐風圧にも影響し得るのです。
と言うのも、建物の強度は壁の量に密接に関係して来るからです。そして、当然ながら窓を大きく、そして数を多くするならば、壁の量もそれに合わせて減ってしまいます。そうすると建物の強度も落ちてしまうのです。
また、窓は配置にも気を付けなければなりません。例えば、南側に大きな窓を多く取り過ぎると、建物の北側と南側で強度が不均一になってしまいます。そして、その様な建物に強い地震が襲い掛かると、建物に大きなダメージを与えてしまい、倒壊などにも繋がり得るのです。
尚、今の3階建ての住宅などは、窓のバランスなどについても計算されて設置されています。
湿気との関係
窓は通風にも大きく関係していますが、このことは建物内部の湿気のコントロールとも関わって来ます。
そのため、窓の配置や種類が適切でないと、湿度の調整が良くなくなり、室内環境だけで無く、建物にも悪影響を及ぼし得ます。
と言うのも、湿気が溜まってしまうと、建物内部の部材の腐食に影響したり、カビの発生にも繋がるからです。
ですから、室内の環境を適正に保ち、建物を長く持たせるためにも、窓を適正にすることは大切なのです。
日差しとの関係
窓の状況は生活する時間にも影響します。窓は採光に大きく関係するからです。
太陽は東から上り、西に沈みます。そのため、窓が東側にあると朝日が入ることになり、午後は暗くなります。
その一方で、西に窓がある場合には午後に西日が入る構造になります。朝日がダイレクトに入る場合には、朝早く目が覚めてしまいます。これは平日には好ましいでしょうが、休日の様な時は少々困ってしまうことと思います。
防犯との関係
窓の配置は防犯にも関係します。仮に、窓が敷地外から見えにくい位置、見通しの悪い地点に設置されると、その窓が狙われやすくなります。
侵入者はとかく目立つ行動を嫌います。敷地から見える窓は狙いにくいです。しかし、見えにくいと外部からも発見されにくくなるため、狙いやすくなってしまうのです。
まとめ
窓について見て来ました。窓はいくつもの種類があり、特徴も違うことがイメージ出来たことと思います。
また、窓の役割を再確認し、建物や生活などに影響することが分かったことと思います。
いずれにしても、窓について考えることは建物と生活の両方に関係する重要な要因です。家造りの際には十分に検討して決めましょう。