家電量販店に行くと、エアコンをはじめとした様々な暖房器具を見ることが出来ます。
どの製品も今では非常に高性能となっているのですが、共通したデメリットとしてあるのは「設置するスペースが必要なこと」だと思います。
と言うのも、エアコンであれば壁に設置するスペースが必要ですし、ファンヒーターなどは床に置くのが一般的なため、置き場が必要です。
…これはいささか勿体無いのですが、それでは、この「設置するスペース」の必要の無い暖房器具は無いのでしょうか。
実はあります。
それは床暖房です。
床暖房は床そのものが暖房器具となっているため、新たに室内に機器を設置する必要が無いのです。
しかし、床暖房には代表的なタイプが5種類あり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。そして、実際的にマイホームに設置することを検討するならば、このメリットとデメリットを把握しておくことは重要です。
そこで、ここでは5種類の床暖房について取り上げ、それぞれのメリットとデメリットについて紹介したいと思います。
床暖房についての復習
まずは、床暖房がどの様な物かを復習しましょう。
床暖房の構造
床暖房の構造は基本的に2種類に分けられます。
「温水式」と「ヒーター式」です。
温水式は一旦お湯を沸かし、そのお湯を床下に配置したパイプなどを循環させて、部屋を暖めるシステムです。
特徴としては、熱源となるお湯を1箇所で沸かしてパイプに送り込むので、1台の給湯器で複数の部屋を暖めることが可能な点があります。
ヒーター式は、床下に敷いたヒーターで発熱させて暖める仕組みです。
パイプの工事が必要無いこともあり、リフォームなどの場合に向いています。
どの様な床暖房があるか
床暖房は上に挙げた2種類が基本ですが、燃料などによって種類がちがいます。主な物は以下の5つのタイプです。
・電気式
・ガス式
・石油式
・ヒートポンプ式
・太陽光式
次項から、それぞれについて説明します。
電気式床暖房
電気式床暖房は、電気で発熱するヒーターを床下に敷いて、部屋を暖めるタイプです。
電気式床暖房のメリット
電気式床暖房のメリットは設置が比較的簡単で、初期費用が抑えられる点です。
電気式は先にも挙げた通り、給湯設備の必要が無いのでリフォームなどに向くのですが、給湯設備や配管が必要無くなることは、初期投資も抑えられる効果が期待出来ます。
温水を各部屋に送ろうとすると、部屋単位の工事では済まなく、部屋を超えての工事ともなるため、床材レベルの工事では終わりません。
しかし、ヒーターの設置であれば部屋単位で電気を持って来れば良いので、工事は比較的簡単で、コストも抑えられます。
また、ガスなどと違い、火を使わずに排気ガスも出さないのは大きなメリットです。
ガス給湯器などの場合、排気ガスが他の設備の塗装などを痛める場合もありますので、そのリスクの無い電気式は魅力的です。
電気式床暖房のデメリット
電気式床暖房のデメリットは、大きな電力が必要な点です。
電気を多く必要とするため、電力会社との契約を変えなければならない場合もあります。
また、電気代が高くなりがちなのもデメリットの1つです。
電気製品の中で、熱を発生させる製品は一般的に大きなエネルギーが必要です。
電気式床暖房も同様のことが言え、やはり光熱費が高くなりやすいです。
ガス式床暖房
ガス式床暖房は、ガスで一旦お湯を沸かし、その沸かしたお湯を床下に設置したパイプを通して部屋を暖める床暖房システムです。
前述の通り、1ヵ所の給湯器を熱源とするため、複数の大型装置の必要の無い点が特徴です。
この点はエアコンと比較すると大きなメリットが見えて来ます。
と言うのも、例えば、エアコンと比較して考えると、住宅用のエアコンは基本的には1台に対して1台の室外機が必要です。
そのため、部屋の数が増えてしまうと室外機のボリュームが大きくなってしまいます。しかし、給湯器で熱を発生させるのであれば、複数の機械は必要無くなります。
ガス式床暖房のメリット
ガス式の床暖房のメリットとしては、「立ち上がりの速さ」を挙げることが出来ます。
例えば、電気式の場合、ヒーターに通電すると、その部分からジワジワと温度が上がります。
そして、その熱が床材を通して部屋を暖めるので、部屋の温度を上げるまでには時間が必要となるのです。
しかし、ガス式の場合はパイプ内に熱くしたお湯を流し込むため、床暖房よりも温度の上昇スピードが上がります。このスピードこそがガス式のメリットなのです。
ガス式床暖房のデメリット
ガス式のデメリットとして挙げられるのが、初期コストが掛かることと工事が大掛かりになってしまうことです。
ガス式床暖房は熱源として給湯器を使うため、給湯器そのものの設置コストが掛かってしまいます。
また、配管工事も必要なので、工事費用がやはり必要です。
特に給湯器は住宅設備の中でも高額商品の1つです。
しかも、広い部屋をカバーするためには、それなりの設備が必要です。
コスト上昇は避けにくい、と言えるでしょう。
石油式床暖房
次に、石油式床暖房について取り上げます。
石油式床暖房は、灯油を燃やしてお湯を沸かし、そのお湯を床下に設置したパイプを通す床暖房システムです。
構造としては、ガス式床暖房と似ています。
石油式床暖房のメリット
石油式床暖房はガス式床暖房とメリットが重なる点はあるのですが、ガス式より大きく優れる点は、やはりあります。
それは「燃料代が安く済む」という点です。
床暖房は基本的に電気エネルギー、ガス、灯油などが主な物となりますが、この中では灯油のコストパフォーマンスが高いと言えます。
そのため、光熱費を抑える点で優れるのです。
石油式床暖房のデメリット
灯油式床暖房は燃料コストは安く済むのですが、燃料が切れてしまうと補充する必要があります。また、備蓄が無くなる度に購入する必要があり、その点がデメリットと言えます。
このデメリットは灯油式特有の物です。
と言うのも、電気にしろガスにしろ、基本的にはコックを開ければ出て来ます。しかし、灯油はその様には行きません。
補充と購入が必要なのです。
ちなみに、冬に寒い夜の燃料切れは悲しくなります。寒い時の灯油の補充はツラいからです。
ヒートポンプ式床暖房
ヒートポンプ式床暖房は、室外機と熱交換機を使って大気から熱を取り出し、その熱で循環液を温めて、その高温となった循環液を床下を通して床を温めるシステムです。
機器としては、室外機がある点からエアコンにイメージが似ていると言えます。
尚、エネルギー源には電気を使います。
ですから、ガス式や灯油式の様に、燃料を燃やさずに床を温めることが可能です。
ヒートポンプ式床暖房のメリット
ヒートポンプ式の床暖房は電気を使いますが、高効率のためにヒーターを使う物よりもランニングコストが抑えられます。
電気式は高熱費が高くなりがちですが、抑えられるのは大きなメリットと言えます。
また、ガスや灯油と違って燃焼することが無いので、安全性が高いです。排気ガスなども出ないのもメリットと言えます。
ヒートポンプ式床暖房のデメリット
ヒートポンプ式床暖房のデメリットは、専用の設備を設置しなければならない点です。
この床暖房の仕組みは大気から熱を取り出す機器の設置と、床下に循環液を通すパイプを敷く必要があります。
そのため、工事にコストが掛かりますし、期間も必要です。
太陽光式床暖房
太陽光式床暖房は、屋根部分で集めた太陽熱で循環液を温め、その循環液を床に設置したパイプを通して部屋を温める暖房システムです。
原理的には電気やガスを使わないため、環境に優しい暖房と言えます。
尚、今の太陽光式床暖房は、他のシステムと組み合わせることによって、雨天時の対策も取られています。
太陽光式床暖房のメリット
太陽光式床暖房のメリットは、電気やガスなどの燃料を使わない点です。
そのため、ランニングコストが安く上がります。
経済状況などによっては灯油などは上がる可能性がありますし、電気やガスは高コストになりやすいです。
しかし、太陽熱を使えば、これらの費用の多くが削られるのです。
太陽光式床暖房のデメリット
太陽光式床暖房のデメリットは、初期費用が掛かる点にあります。
太陽光を集めるコレクターの設置と配管の設置に費用が多く掛かるからです。
そして、中古住宅などに設置する場合には、改造が難しくなる場合もあります。
床暖房設備設置の注意点
床暖房設備のメリットやデメリットを見て来ましたが、上手に使うためには、いくつかのクリアすべきポイントがあります。
まず第一に挙げられるのが、建物の断熱性能を上げることです。
いくら床暖房を設置したとしても、建物の断熱性能が良く無い場合には熱がどんどん屋外に逃げて行ってしまいます。
そして、高熱費用もそれに比例して上がってしまいます。
ですから、床暖房を効率的にするには、断熱材の検討も必要なのです。
第二番目としては、トータルでコストを考えることが重要であることです。
確かに床暖房には初期費用が安く済むものや、ランニングコストを抑えられる物がありますが、それらをトータルして自分の家に合うかどうかの検討が必要です。
そして、第三番目としては、メンテナンスについての考慮も重要である点です。
床下暖房設備も一定の期間が過ぎたら更新をしなければなりません。
そして、その時の工事をも最初から考えておくならば、工事費用にしても工期の長さにしても、短縮することが可能となります。
この様に、床下暖房を入れるにあたっても、確認すべき周辺の事情があります。しっかりと確認をしましょう。
まとめ
床下暖房について5つ挙げ、それぞれのメリットとデメリットを見て来ました。仕組みや特徴などが分かったことと思います。
床暖房は快適ですが、システムが多いため、選択に悩むことも多いかも知れません。
しかし、自宅の状況やエネルギーに何が使えるかなどで、いろいろと選択肢が出て来ることでしょう。
ぜひとも自宅の構造や周辺地域の環境を調べ、最適な床暖システムを設置しましょう。