住宅は老朽化するもので、快適に住み続けるならばリフォームが一番と言われます。しかし、リフォームでは無くて、建て替える選択肢があることも事実です。
ところで、テレビのリフォーム番組を見ていると、家の構造部材を残して改装する「スケルトンリフォーム」が紹介されています。
しかも、リフォームがあまりにも素晴らしいため、建て替えよりもリフォームの方がメリットが大きい様にも見えてしまいます。しかし、それは本当なのでしょうか。
そこで、ここではスケルトンリフォームと建て替えについて取り上げて、両者を比較してみたいと思います。
「スケルトンリフォーム」と「建て替え」の違い
まずは住宅の「スケルトンリフォーム」と「建て替え」の違いについて復習してみましょう。これらの言葉は一般化しつつはありますが、誤解を招きやすい言葉だからです。
スケルトンリフォームとは
まずはスケルトンリフォームですが、簡単に言うと住宅の柱や梁などの主要構造部材を残して、壁などを撤去し、張り替えるリフォームを指します。
住宅は柱や梁に壁や屋根、あるいは床などが組付けられていますが、これらの部材や設備は年月と共に老朽化してしまい、能力が低くなってしまいます。
例えば、壁材や屋根材などは屋外の日射や風雨の影響を受けてしまい、劣化してしまいます。また、内装材も同様に老朽化が進みます。また、浴室やキッチンなどの設備は腐食したりカビが繁殖しているかも知れません。
そして、場合によっては破損個所が多くなり、雨漏れなどの発生もありますし、浴室であるならば漏水のリスクも出て来ます。老朽化の問題は普段からのメンテナンスで長持ちさせることは可能なのですが、それでも限界はあり、寿命が来てしまいます。
しかし、住宅に設置されている部材や設備を一旦撤去して、全面的に取り換えるならば、新築同様の住空間を造ることが可能となるのです。しかも、スケルトン化するならば、壁の中の断熱材なども変更が可能なので、新たに断熱性をアップさせたり、遮音性を追加させることも可能となるのです。
建て替えとは
建て替えとは、その名の通り建物全体を解体し、その後で新しい建物を建てることです。そのため、柱や梁などの基本構造から検討するので、完全に違う住宅とすることが出来ます。間取りの配置のみならず、廊下の幅などのモジュールの部分から変わるので、生活全体を変える場合に向いていると言えます。
例えば、古い家の場合は尺貫法で作られているため、廊下の幅なども狭く、車いすなどで動く場合には旋回などが難しかった場合がありました。しかし、建て替えによって、モジュール全体を変えてやれば、車いすの走行にも支障が出ない家を作ることが出来ます。
この様に、基本構造から一新すれば、住宅で「出来ること」が増えるメリットがあります。そして、これがまさに建て替えの魅力と言えるのです。
コスト的にはどうか
ところで、家づくりにおいても「予算」の部分は非常に重要です。家を造るにおいても、先立つ物は「費用」になってしまうからです。
それでは、リフォームと建て替え、どちらにコストメリットがあるのでしょうか。
建て替えの方が安く済む
結論から言うならば、建て替えの方が安く済みます。
リフォームは既存の建物の設備や部材を撤去して使うため、最初からあった構造を再利用するため、コストが安くなる様に見えるかも知れません。しかし、実際にはスケルトンリフォームよりも、建て替えた方が安くなるのです。
尚、どれくらい安くなるかはケースバイケースです。と言うのも、新たに設置する設備にもグレードがあり、高級な設備を多く使えば価格も上がってしまうからです。
因みに、トータルの費用を「撤去」と「建築」の部分に分ければ、一層明確になることと思います。
撤去費用の比較
それでは、撤去費用はどの様に違うのでしょうか。
まずはスケルトンリフォームですが、既存の構造部材をそのまま利用するため、全体を一気に壊すことは出来ません。使える機械も限られてしまいますし、壊すことが出来る部分を都度確認する必要があります。
そのため、労力が必要となり、それだけ費用が多く掛かってしまいます。
その一方で、建て替えの場合は全体を壊すので、一気に解体出来ます。ケースにもよりますが、重機の利用が可能になりますので、工期も短くて済みます。そのため、費用は比較的安く抑えられます。
建築費用はどちらが掛かるか
次に建築費用です。
ケースにもよりますが、建築費用も建て替えの方が安くつく場合が多いです。建築費用はスケルトンリフォームの場合、坪単価が80万円くらいに上ることもあります。これはハウスメーカーでもトップレベルの価格と同レベルです。
設備のグレードについて
キッチンや浴室などの住宅設備は、一般の3つのグレードに分けられています。つまり、高級、中級、普及の3つです。
そして、これらは高級になるにつれて機能が上がり、素材なども凝った物が使われます。例えば、キッチンであれば、高級なタイプには人造大理石なども多く使われ、高級感を表現しています。
ところで、リフォームにしても、建て替えにしても、設備の予算を考えずに坪単価だけを検討すると、思わぬ予算オーバーをしてしまうことも考えられます。
設備の費用に関しても、事前に調べておくことが大切です。
建て替えが安くなる理由
それでは、なぜ建て替えの方が安くなるのでしょうか。
まず第一に、今の住宅はコストダウンが非常に進んでいて、高品質であっても非常に安く造ることが可能となっているからです。今は「安かろう悪かろう」と言った時代では無いのです。
住宅のコストダウンには秘密があります。まず部材は基本的に向上で加工されて出荷されます。そして、工場で部材を製造するのはロボットなどが多いです。そして、このロボットは設計図面に合わせて動き、自動的に必要な部材を造り出します。
そのため、現場での施工性も非常に良く、スピーディーに構造を造ることが可能だからです。
また、住宅会社はコストダウンのために設備を大量に購入して、価格を下げている背景があります。そのため、規格化された設備の範囲ならば、安く抑えることが可能となるのです。
その一方で、リフォームの場合は既存の構造に合わせて部材を造らなければなりません。そして、現物合わせで作る必要があるため、手間が非常に掛かります。そのためにコストが掛かってしまうのです。
部材の耐用年数
ところで、リフォームを考える場合には部材の耐用年数についても知っておくべきでしょう。と言うのも、リフォームは基本構造をそのまま使用するからです。
それでは、今の住宅の構造部材の耐用年数はどれくらいでしょうか。
今の住宅の構造材は、木造の在来工法の場合には、集成材が使われています。集成材は材木を一旦切断し、節などを取り除いた後で接着した材料で、寸法安定性などに優れています。集成材の耐用年数は非常に長く、林業関係者に言わせると50年とも70年とも言われます。非常に長い期間の利用が可能なのです。
リフォームの意義
さて、コスト的にはリフォームの方が不利となった訳ですが、それでもリフォームには大きな意義が、実はあります。
そこで、ここではリフォームの意義について説明したいと思います。
廃材を出さない
まず第一に挙げられるのが「廃材を出さない点」です。
家一軒分の廃材はどれくらいになるでしょうか。それは解体現場を見れば一目瞭然です。
重機が通った跡に山となった廃材を見れば、その多さに驚く人もいることでしょう。
そして、その多くが産業廃棄物として処理されるならば、環境保全とは逆行している現実を知ることになります。
その一方で、リフォームで対応するならば、出る廃材は少なくて済みます。出る廃材には壁や内装材などの産業廃棄物となる物はありますが、基本構造の部分は残るので、その分の廃棄は減るのです。
構造を繰り返し使う
構造を繰り返し使うことも環境保全の立場からするならば、意義深いことと言えます。
環境保全の考え方からすれば、3R(リデュース・リユース・リサイクル)のリユースに当たるからです。この3Rは社会全体で推進されるべきであり、住宅建設においても実行されるべきと言えます。
そして、リフォームはこの考え方に、まさに合致し、意義深いと言えるのです。
リフォームを取るか建て替えを取るか
ここまでで、住宅のリフォームと建て替えの両者の特徴が分かったことと思います。それでは、どちらの方にメリットがあるのでしょうか。
最終的には施主の判断
家づくりは最終的には個人の判断に寄らなければなりません。最終判断は施主の判断なのです。
確かに家づくりにおけるメリットはコストをはじめ、雰囲気づくりなどもあるかも知れません。そして、その部分には損得で判断するべき問題も多いことだと思います。
しかし、家づくりにポリシーを持つならば、損得勘定だけが決断の原動力になるべきではありません。もっと様々な判断基準があっても良いのです。
家づくりはあくまでも個人の自由です。そのことを忘れない様にしましょう。
コスト優先ならば建て替え
先にも挙げた様に、スケルトンリフォームと建て替えを比べるならば、コストメリットの面からすれば建て替えの方に軍配が上がります。
そのため、費用の捻出が厳しいと思われる人には建て替えがおすすめ出来ます。
ただし、資金繰りにローンを使う場合には、金利などの比較が必要となります。ローンの条件を併せて確認しましょう。
リフォームは環境問題対策などに貢献
リフォームの良い点は環境問題対策などへの貢献があります。環境問題は地球規模の対策が必要です。
そして、その対策は個々人の協力によって成り立ちます。
環境問題は、私たちの子孫に良い住環境を残すかどうかの問題にも繋がりますので、他力本願であるべきで無いことは確かで、積極的な参加が望まれます。
リフォームを検討する人は、環境問題を前向きに捉える人で、崇高なポリシーの持ち主と言えるでしょう。
まとめ
思い入れのある家を壊して新築するのもいいのですが、たとえ、コストが上がってもリフォームしたいと考える人も多いのも事実です。実は、家を買う人の半分以上が中古住宅を購入してリフォームをしています。
新築戸建てを購入する人の方が少数派です。アメリカやイギリスといったヨーロッパでは、100年以上前に建築された家をリフォームするのが主流です。古ければ古いほど価値があると考えられています。
家づくりはコストで考えるのも良いですし、個人の考え方を前面に押し出すのも、もちろんアリです。そして、それが家の個性となるとも思われます。個性の光る家は、やはり素晴らしいです。
ただ、家づくりはやはり高額です。やり直しは効かないので、十分にプランニングをして取り掛かりましょう。