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家づくりの知識

造作風呂の魅力!ユニットバスが主流の現代 造作風呂のメリットとデメリット

日本人が入浴を好むことは世界の人々も良く知っていて、日本に来たら「銭湯に行きたい」と望む人も多いです。
実際、海外のブログを見てみると、温泉地のレポートや、銭湯に入る時の手順やモラルなどについて解説した物も数多く見られます。
このことを考えると、日本風呂の文化の素晴らしさを垣間見ることが出来ると思います。

それでは日本の住宅の風呂の状況は…と言うと、近年になって色々な変化が見られました。
と言うのも、家そのものが現代的に変わって来たので、風呂もそれに合わせて造作風呂からユニットバスへと変わって来たからです。

しかし、最近のコロナ渦で、浴室の在り方が見直されて来ています。…造作風呂を選ぶ人が増えているのです。それでは、造作風呂はなぜ選ばれるのでしょうか。
そこで、ここでは造作風呂にスポットを当て、メリットとデメリットについて解説したいと思います。

近年の浴室の傾向について

造作風呂のメリットとデメリットに触れる前に、近年の浴室の傾向について振り返ってみましょう。

昔は造作風呂だった

築年数の経った中古住宅の玄関を入ってみると、今の住宅の様相とは結構違うことに気が付きます。
部屋はフローリングでは無く畳の和室が中心で、LDKと違い、台所はそれほど大きくはありません。

では、浴室はどうかと言うと、やはり今のユニットバスとは違います。
浴槽は今の素材とは違いますし、床面はタイル張りのケースが多いです。

これらの様子を見ると、今のユニットバスの方がスマートに見えるかも知れません。
今のユニットバスは昔の風呂場よりもデザイン性にも優れていて、機能が豊富な物もあるからです。

しかし、日本の昔からの在来工法の浴室は、あくまでもこの中古住宅で見られる造作風呂であって、ユニットバスでは無いのです。
造作風呂こそが昔ながらの風呂と言えるのです。

ユニットバスの流行

では、なぜ近年の住宅はユニットバスが多く見られるのでしょうか。
これにはいくつかの理由があります。

まず挙げられるのが建築コストが安くすることが可能だからです。
住宅建材には高級・中級・普及とグレードが分かれますが、普及グレードになると非常にコストパフォーマンス性が良くなります。
そのため、普及グレードの物を使えば建築費用が抑えられ、住宅の販売価格も抑えられて売りやすくなります。

また、高品質な物が出て来ていることも追い風です。
ユニットバスのメーカーは、様々な技術を応用してユニットバスを進化させています。
そのため、ユニットバスにも新しい機能が追加され、その機能が顧客に受け入れられています。

そして、工事が比較的容易である点も理由として挙げられます。
ユニットバスはタイル張りの様な工事は基本的には発生せず、施工性も良いです。
そして、工期も短くて済むので、工務店などとしても扱いやすいのです。
この様に、ユニットバスには様々な利点があります。ユニットバスの流行の背景には、この様な状況があったからなのです。

コロナ渦の中で見直されて来た造作風呂

ところで、その様な浴室事情の中で、今まであまり見られない動きが出て来ました。ユニットバスを使うのでは無く、敢えて昔ながらの造作風呂を使おう…という動きです。

これは世界中の脅威となっている新型コロナウィルス感染症の流行が背景にありました。
この流行のために、人々の仕事はテレワークにシフトし、自宅にいる時間が増えたのです。

また、住宅を造るメーカーにしても、テレワークを視野に入れる家造りの提案を積極的にする様になりました。
今後の労働のあり方が変わる様にも思われるからです。
そんな背景の中で、ユニットバスでは無く、敢えて造作風呂を選ぶ人が増えて、造作風呂が見直されて来たのです。

造作風呂のメリット

ここで、造作風呂のメリットについて取り上げてみましょう。

自由な広さの浴室を造りやすい

まず挙げられるのが、自由な広さの浴室を造りやすい点です。
浴室の広さはユニットバスの場合には規格化されています。
そのため規格品のサイズの中で選ぶことになり、自由度はやはり低いです。

例えば、ユニットバスの規格品の寸法表を見るならば、浴室は0.75坪タイプの物から1.5坪の物まで揃っています。
浴室を選ぶときはこの中から好みのサイズを選ぶのですが、逆から言うならば、このサイズから外れる物は対応が難しい…ということになってしまうのです。

しかし、造作風呂の場合には、浴槽も最初から造ることも出来ますので、ユニットバスでは対応しない大きな物も可能です。
ですから、家族風呂の様な大きな物であっても造作の場合には可能となります。

好みの素材を使うことが出来る

次に挙げられるのが、好みの素材を使うことが可能な点です。
ユニットバスの場合には、浴槽や床材などは基本的には規格化されているので素材も決まっています。
浴室を構成する素材はグレードによって違うため、高級な素材としたい場合には高級グレードを選べば良いです。

しかし、それでも自由と言う訳には行かず、好みの物を使えるとは言えません。
しかし、造作風呂であれば最初から風呂を造ることになるので、好みの素材を使って浴室を造ることが可能です。例えば、天然木を多く使った大きな浴室などは、メーカー製のユニットバスでは対応が限られるのですが、造作風呂の場合には自由に造ることが可能です。

造作風呂のデメリット

大きな浴室を造ることが可能で、しかも好みの素材を選べる…と聞くと、造作風呂が非常に魅力的に見えるのですが、やはり造作風呂にもデメリットはあります。
代表的なデメリットを挙げてみましょう。

価格が高め

まず挙げられるのが、価格が高めになってしまう点です。
ユニットバスの価格帯を見てみると、コストを抑えた普及品の物になると、製品代で20万円レベルの物もあります。
これは確かに機能や素材の点から考えるならば、それほど優れてはいないかも知れませんが、予算を抑えたいならば非常に魅力的です。
しかし、造作風呂の場合にはこの様には行かず、価格は高めになってしまいます。

メンテナンス性で劣勢

浴室は水を使う部分であるため、住宅設備の中でも劣化が早い箇所です。
そのため、メンテナンス性の高さは設備維持のためにも重要な要因となります。
また、汚れが付きやすいところでもあるので、掃除のしやすさも大切です。

そして、ユニットバスはこれらの点で優れていて、仮にトラブルが発生した場合でも、対応は比較的簡単です。
工務店やメーカーに相談すれば良い対応をしてくれます。

さて、造作風呂ですが、メンテナンス性でユニットバスに劣ってしまいます。
まずはトラブルの際の対応ですが、故障の内容にもよりますが、どこの工事業者でも対応出来るとは限りません。
得意な業者と対応が困難な会社はやはり分かれているからです。

また、浴室の状況にもよりますが、掃除に不便な物もあります。
例えば、タイルの場合にはユニットバスよりも掃除に手間が取られます。

ユニットバスより工期が長い

造作風呂は浴室を最初から造るので、工事に手間が掛かり、工期も長くなります。
そのため、例えばリノベーションをする場合は条件的に不利になります。
…リノベーション工事の間に仮住まいを手配するならば、その期間が長くなってしまい、その分の賃料が増えるケースも考えられるのです。
この点、ユニットバスであれば、部材がユニット化されているので、それほど工期は長くなりません。

造作風呂を造るのに向く人

造作風呂のメリットとデメリットについて、ユニットバスと比較して挙げてみました。
確かにユニットバスの方が優勢にも見えるかも知れませんが、それでも造作風呂には選ぶ価値がある…と判断する人もいます。

これは「向き・不向き」による部分が大きいのかも知れません。
そこで、ここでは造作風呂に向く人はどんな人であるかを考えてみたいと思います。

ゆったりと入浴をしたい人

まず挙げられるのが、ゆったりと入浴をしたい人です。
と言うのも、造作風呂の場合にはユニットバスよりも広い浴室を造ることが可能だからです。

また、造作風呂が自由になるのは浴槽や床などだけではありません。他にも窓を自由にすることも可能となるのです。
そのため、窓を大きくして開放的にすることも可能となり、より上質のくつろぎの空間とすることも可能となるのです。

オリジナリティを重視したい人

前述の様に、造作風呂の場合には好みの素材を使うことが可能です。
そのため、自分のこだわりを生かしたオリジナリティ溢れる風呂とすることも可能となります。

例えば、天然木を好む人であれば、樹種にまでこだわることも可能です。造作風呂であればヒノキ風呂にすることも自在と言えます。
また、石を使ってゴージャスな風呂を造りたい場合でも、造作風呂であれば出来ます。
天然の大理石を使った豪華な浴室も造ることが可能となるのです。

子供とゆっくり入浴したい人

先にも挙げましたが、コロナ渦の中にあって、家族との関わり方を考え直す人も増えたことと思います。
今までは夜に満員電車で帰っていた家が、昼間から居る家に変わったのですから、大きな変化と感じた人も多いことでしょう。

それに伴って、家族との過ごし方も変わったケースも多いと思います。特に、子供と一緒に過ごす時間が増えた人も多いのでは無いでしょうか。
さて、この騒動を契機にして、子供との入浴の機会が増えた人は多いのでは無いかと思います。
それに伴い、「子供とゆっくりと入れる広い風呂場が欲しい」と思った方もいることと思います。

造作風呂はこの様な人に向いています。
広い浴槽、ゆったりした洗い場、個性的な内装、これらは造作風呂で可能な物で、ユニットバスには難しく、やはり造作風呂に軍配が上がります。

まとめ

造作風呂について考えてみました。
ユニットバスと比べた場合の、造作風呂の持つ独特の魅力について、改めて分かった方もいると思います。

このコロナ渦にあって、今までは考え付かなかったライフスタイルに気が付いた方も多いことでしょう。
それは、もしかしたら手軽さとスピードを敢えて手放し、「ゆったりとした空間と時間」を大切にするライフスタイルなのかも知れません。

いずれにせよ、造作風呂は今まで縁遠かった生活を実現してくれるはずです。「ゆっくりした時間」をリフォームのコンセプトに入れるのならば、造作風呂も良いのでは無いでしょうか。