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MyDesignの家づくりノート

「親友の会社の保証人に…」その判、押す前に。人生を守る3つの確認事項

保証人 不動産 お金

「もし、あなたの大切な親友が、事業を始めるために頭を下げてこう言ってきたら…?」

『頼む!銀行から保証人が必要だと言われたんだ。君しか頼れる人がいない!』

友情と、得体のしれないリスクとの間で、心は大きく揺れ動くはずです。

こんにちは、MyDesignの泉田です。私たちはリフォーム・リノベーションや家づくり、そして、お客様の大切な資産である不動産の売却仲介を通して、人生の大きな節目に寄り添うことを信条としています。

特に、ご自宅やご所有の不動産を「売却」しようとお考えのお客様からは、こうしたお金にまつわる、少しダークで、しかし非常に重要なお話をご相談いただくことが少なくありません。

これは、私が以前に体験した、あるお客様との忘れられないエピソードです。

「私の家や土地まで、取られてしまうんでしょうか…?」

その日、事務所のドアをノックしたのは、長年お付き合いのあるお客様のAさんでした。ご自宅の売却を検討され、何度かご相談に応じていた方です。しかし、その日のAさんはいつもと違い、青ざめた顔で椅子に座るなり、重い口を開きました。

「泉田さん…実は、親友のBが会社を立ち上げることになりまして。その融資のことで、保証人になってほしいと頼まれたんです」

親友の夢を応援したい。その気持ちは痛いほどわかります。しかし、Aさんの声は不安に震えていました。

「保証人になる、ということが、どれだけ大変なことか、正直よく分かっていなくて…。もし、Bの事業がうまくいかなかったら、私がすべてを負うことになるんですよね?最悪の場合、今売ろうと考えているこの家や土地まで、差し押さえられてしまうんでしょうか…?」

友情と、ご自身の人生、そしてご家族の未来。その狭間で苦しむAさんを見て、私はコンサルタントとして、感情論で「やめなさい」と言うのではなく、まず冷静に「知る」ことの重要性をお伝えすることにしました。

リフォーム・リノベーション

【クイズ】あなたの人生を守る法律、知っていますか?

「Aさん、お気持ちはよく分かります。だからこそ、まず知っておくべきことがあります。個人の保証については、安易な判断で人生が破綻しないよう、法律が『冷静な盾』となって私たちを守ってくれているんです。ここで一つ、クイズです。個人の保証契約に関する次の記述のうち、正しいものはどれだと思いますか?」

  1. 事業のためのお金を借りる保証契約では、保証する金額の上限(極度額)を決めていなくても、契約は有効である。
  2. 保証契約を結ぶと、将来にわたって発生する利息や損害金のすべてを、永久に保証しなくてはならない。
  3. もし保証人である自分に万一のことがあったら、その保証人の立場は、自分の子供や配偶者(相続人)に引き継がれる。
  4. 事業のための保証人になる場合、契約前に公証役場で「保証する意思がある」ことを確認する手続きが必要な場合がある。

Aさんは腕を組み、真剣な表情で選択肢を読み比べ、「うーん…3番でしょうか…?責任は引き継がれてしまいそうで怖いです…」と答えられました。

知っているだけで未来が変わる「保証契約」の真実

「Aさん、そこが一番心配な点ですよね。ですが、ご安心ください。原則として、保証人個人の責任は一身専属的なもの。つまり、その人一代限りのものであり、相続人には引き継がれません。もし引き継がれてしまったら、会ったこともない親の友人の借金を、子供が背負い続けることになりかねませんからね。ですから、3番は誤りです」

そう伝えると、Aさんの表情が少し和らぎました。

「そして、この問題の正解は…実は4番も関係してきますが、Aさんを借金の無限地獄から守る最も強力なルール、それは1番の逆、つまり『極度額を定めなければ、その効力を生じない』ということです」

私は続けました。

「個人が事業用のお金の保証人になる場合、契約書に『私が保証するのは、最大でも〇〇万円までです』という上限金額(極度額)をはっきりと書面で定めなければ、その保証契約そのものが“無効”になるんです。これは、個人の保証人を守るための、最強の盾と言えます」

友人も自分も守るための「3つのチェックリスト」

この知識を元に、私はAさんに具体的なアドバイスをしました。

「Aさん、お友達を助けたいというお気持ちは、本当に尊いものです。ですが、ご自身の人生も、同じくらい大切にしなければなりません。もし、どうしても保証人になるという決断をされるのであれば、最低でも、この3つの点だけは、契約書で必ず確認してください」

  1. 【極度額の確認】 保証する金額の上限(極度額)が、Aさんご自身が『最悪、これなら自分の資産の範囲内で支払える』と覚悟できる金額で、きちんと書かれていますか?青天井の契約は絶対にダメです。
  2. 【公証人による意思確認】 事業のための保証契約では、契約前に、保証人になろうとするご本人が公証役場へ出向き、「騙されたり、無理やり署名させられたわけではなく、リスクを理解した上で自分の意思で保証人になります」という意思確認の手続き(保証意思宣明手続)が法律で義務付けられています。この手続きの説明は、お友達からありましたか?
  3. 【契約内容の専門家チェック】 少しでも分からないこと、納得できないことがあれば、絶対にサインしてはいけません。その際は、私が一緒に契約書を確認しますから、必ず一度、持ち帰ってきてください。

私の話を聞き終えたAさんは、深く、そして安堵のため息をつきました。

「泉田さん、ありがとうございます…。危うく、友情だけで判を押してしまうところでした。何をどう確認すればいいのか分からず、ただただ怖かったのですが、おかげで冷静になれました。自分の人生と友人の夢、両方を守るために、何をすべきかが見えました。本当に、相談してよかったです」

晴れやかな顔で帰っていくAさんの後ろ姿を見送りながら、私は改めて思いました。 私たちの仕事は、お客様の「家」という資産だけでなく、その方の「人生」そのものを、様々なリスクからお守りするパートナーであるべきだ、と。

ご自宅の売却やリフォーム・リノベーションは、人生の大きな決断です。だからこそ、お金に関する不安や疑問は尽きません。「保証」という言葉の重み。それは、時に人生を大きく変えてしまいます。

もし、あなたの周りで同じように悩んでいる方がいたら、あるいはご自身がその当事者になったら、決して一人で抱え込まず、私たちのような専門家にご相談ください。

リフォーム・リノベーション、家づくりも、不動産売却も、まずは正しい知識という土台から。MyDesignはいつでも、あなたのための「冷静な盾」でありたいと願っています。