外皮計算と一次エネルギー計算が必須? 住宅のコストと性能はどうなるかを解説

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2020年建築物省エネ法


2020年から建築物省エネ法が全戸義務化というのが建築業界でしばらく話題になっていました。この省エネ法ですが2012年に改正された「改正省エネ基準」という内容になり2020年から全ての住宅や建築物には外皮計算と一次エネルギー消費量の計算を義務化とし、従来の基準では住宅と建築物は建てられないとするものです。この内容を分かり易く説明すると「今までの省エネ基準の計算根拠が無い建物は建てられません」という事です。これから住宅を建築する予定のユーザー達にとっては性能基準が書類でしっかりと確認できますし付加価値もついて非常に有意義な内容です。しかしこの改正内容は一次見送りとなってしまいました。

省エネ法の改正時期


本来であれば2020年には全ての建築物に適用される法律でしたが実際には2021年より300㎡以上の建物に対してのみの適用と現在なっています。

300㎡というと約90坪の建物の大きさになります。現状一般的に家族4人から5人の住宅は30坪~40坪前後なのでその倍以上の建物を建てないと省エネ基準の明確化は義務付けでないことになり、ほぼ一般住宅には現在適用される見込みが残念ながらないと言えるでしょう。しかし、日本の住宅基準は海外の省エネ基準に合わせる方向性になっていますのでこれからの行政の法改正や住宅業界に期待が寄せられます。では省エネ基準で代表的な物を分かり易くご説明していきます。

外皮計算


外皮計算とは単純にいうと住宅の断熱性能がどのくらい優れているかを数値で示したものになります。数値が小さい程断熱性能が高くなります。計算の根拠としては外壁や窓、天井、床などから逃げる熱の損失量を合計して外皮(外壁・天井・屋根・窓・ドア)の面積で割って求めるようになります。この計算ででてきた値を外皮平均熱流量率(UA値)と呼び省エネ基準の判断の一つにするのです。単純説明すると「魔法瓶のように断熱性能の優れた家を建てなさい」という事になります。

一次エネルギー計算


省エネ法の解釈の中にエネルギーは2通りあります。一次エネルギーは火力、水力、太陽光などの自然の力で生み出されるエネルギーの事を指します。対して2次エネルギーとはその火力などの一次エネルギーを変換したもの(電気・ガスなど)を指します。実際にどのような計算かというとまずは住宅設備機器で使用する空調、冷暖房設備、給湯設備、照明などの消費するエネルギーを合算したものが法律基準の値より下回れば合格となります。単純に言えば省エネタイプの電化製品や給湯器を設置してください」「という事です。

日本の住宅性能


それでは我らがMADE IN JAPNの住宅の性能は海外などと比較してどうでしょうか。実は海外の住宅は日本の住宅よりはるかに上回る断熱性能をもっています。これは前述した省エネ基準の義務化が遅れていることも原因のひとつに挙げられます。この省エネ基準の義務化が遅れている為先進国の断熱基準で日本の住宅を照らし合わせると最低水準となっておりエネルギー効率も悪く、ヒートショックなどの起きやすい健康に悪い住宅に位置づけされているのが日本の住宅の現状です。

断熱材


日本の断熱材といえばグラスウールが一般的です。その他ポリスチレンフォームや吹付ウレタンなどの素材もありますが建物の構造上壁の断熱材の厚さを100mm以上とるのは現状の日本住宅では一般的ではない状況です。ちなみに海外のドイツの断熱材はセルロースファイバーなどを使用し厚さは200mm以上入っている場合が多いようです。北欧などの場合は寒さなどの気候に関して敏感で断熱性能を重視している住宅が多いようです。

サッシ


日本のサッシはアルミ製品が一般的でしょう。価格も安く、加工簡単なので現在では一般的に広く使用されています。しかしアルミサッシは熱効率が非常に悪い為断熱性能は非常に悪いと言うのが海外の一般的な発想です。加工やメンテナンスの問題もありますが海外で断熱性能が良いサッシといえば木製のサッシになります。木製のサッシは熱を逃がしにくく断熱性能に非常に優れており冷暖房の効率が非常に良い素材だと言えるでしょう。

住宅設備機器


住宅設備機器においては省エネ基準に対して日本製品は優秀であるといえます。代表的な大手パナソニック、三菱、日立、ダイキンなど技術的には非常に優秀な住宅設備機器が日本にはそろっています。但し、住宅設備機器の中には海外製品でも省エネに非常に優れた製品もあります。蓄熱暖房機などは良い例といえます。また日常生活においても色々と風習の違いなどがある為個々の住宅設備機器の性能は日本製品が良くても海外には受け入れられないケースもあります。代表的なものが温水洗浄便座です。日本では当たり前の温水洗浄便座ですが海外では水を使い過ぎるという事で一般的ではありません。

住宅のコストはどう変わる


これらの住宅の法律や性能関係を踏まえると省エネ基準の義務化になった場合どのようなことが起きるでしょうか。これは一概には言えませんが間違いなく住宅コストに反映されるといえます。単純に考えても「今より高性能」は価格が高くなるからです。また住宅を建てる為には建築確認申請という物が必要です。省エネ基準の義務化になるとその手続きも複雑になると言えるでしょう。それでは日本の住宅業界ではどのように対応していくのか考えられることを解説していきます。

工務店


工務店の場合、行政手続きは外注という事で設計事務所に建築確認申請を依頼しているケースが非常に多いと言えます。その為外注費の利益分や省エネ基準適合計算書の作成・認定費用がかかりその費用だけでも10万円前後は現在よりコストアップになるかもしれません。また断熱材やサッシなどの流通経路も薄利多売ではないので断熱材やサッシのコストは必ず上がりユーザー側に反映されるようになることもあるでしょう。住宅建材メーカー業界での価格の改定が必要になるかもしれません。

中規模ハウスメーカー


中規模ハウスメーカーでも建築確認申請は外注の設計事務所に頼んでいる場合も多いようです。またローコストメーカーなども外注して設計事務所に依頼しているといえます。社内で外皮計算や一次エネルギー計算などができ、行政認定などもスムーズなる流れやシステムを考えるようになると思いますが多少のコストアップはやはりあると言えます。また断熱材やサッシなどの流通経路は薄利多売としているメーカーも多い為地元の建材メーカーと連携して取り組むことが予想されます。しかし量産品が多くなる為デザイン的に優れたサッシや特殊なサッシは非常に割高になると考えられます。

大手ハウスメーカー


大手ハウスメーカーの場合社内で省エネ基準の計算などを専門に行う部署ができるでしょう。大手ハウスメーカーは社内の有資格者にて建築確認申請を提出する場合も多く、専門の部署を作る為直接的なコストアップは低いと予想されますがその分計算する部署人件費が発生する為やはり多少のコストアップは発生する可能性があります。断熱材やサッシは建材メーカー本部にて価格の設定を行う為急激なコストアップはないと考えられますがやはり特殊なデザインのサッシなどは割高になる可能性があります。

住宅の建築時期


ここまでで住宅の建築時期はいつが良いと言えるでしょうか。今の時期であれば省エネ基準の規制も緩い為価格も割安で建築できるでしょう。しかし、省エネ基準の値が明確になっていない為断熱性能や気密性能に不満が出る場合もあります。ただしっかりと基準を満たすような住宅を作ることも充分可能ですので建築業者の担当とよく相談してみてください。

省エネ基準が義務化された後が良いと考える方もいると思います。義務化された後での建築は知識がなくても高性能の住宅が手に入ると予想されます。また住宅の売買の時にも付加価値がでるので安心できるとも言えます。しかし住宅のコストは間違いなく100万円近くはコストアップする事も覚悟しなければなりません。どちらの時期が正解という事はありませんが今一度世界基準の住宅を手にする為には何が最善かよく勉強し、検討する事が必要と思われます。

まとめ


最後まで読んで頂きありがとうございました。一般的には馴染みがあまりない住宅の省エネ基準ですが地球温暖化問題と密接に係りあっています。今回2020年には見送りした省エネ基準のですが見送りした理由には建築業界の未習熟や全体的な住宅建築のコストが100万円近く上がるのも理由としてあがっていました。

改正期間が7年程ありましたが全体的に浸透しなかったようです。今後日本の住宅やそれらを取り巻く環境も省エネや地球温暖化対策に前向きになっていくと思いますので住宅を必要とするユーザー側もこれに対して真剣に考える時期かもしれません。

近年、一戸建てでも自主的に外皮計算と一次エネルギーを検討するパワービルダー、工務店が増えてきました。当社で設計した住宅も約80%が検討して確認申請を下ろしております。法律上300㎡以上の建物がクリアしなければなりませんが、自主的に行うことでこれから家を建築する方にとっては安心材料になります。

これを読んでいる、工務店の方やハウスメーカーの方で、外皮計算と一次エネルギーを外注したいと考えている方は、当社にご依頼ください。

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