「縁の下の力持ち」という表現があります。「見えない部分での活躍の重要性」を言い表した言葉と言うことが出来るのですが、住宅の場合には、これにピッタリと当てはまる部分があります。
まさに「縁の下」にある部分…「基礎」です。
住宅を見る場合、基礎はほとんど目に付くことはありません。
特に内覧する場合などは、見ることが出来ませんので、あまり気にすることも無いかも知れません。
しかし、建物を考える場合、基礎は非常に大切な部分です。
そこで、ここでは、基礎の役割からはじめて、基礎の種類、そしてリフォームなどについて、述べて行きたいと思います。
基礎の役割について
まずは、基礎の役割について再確認して行きたいと思います。
基礎…と聞くと非常に大切な部分であることは想像出来ても、具体的な役割がピンと来ない場合もあると思います。
しっかりと押さえておきましょう。
建物を安定させる
まず大切な役割は「建物を安定させる役割」と言うことが出来ます。
建物は柱や梁で組付けられていて、非常に頑丈な構造と言うことが出来るのですが、これはあくまでも「頑丈な基礎」の上に乗って、はじめて実現されます。
基礎が弱い場合には、建物の強度そのものに疑問が出て来るのです。
例えば、基礎の非常に弱い建物について想像してみましょう。
基礎が弱いと建物が安定せず、建物が傾いてしまったり、悪い場合には破損してしまうこともあり得ます。
基礎が仮に沈んでしまうと、床までも傾いてしまいます。
そうすると、生活するにおいても、非常に都合が悪くなってしまいます。
しかし、基礎がしっかりしていれば、建物も安定し、沈むことも無くなります。
その結果、建物も長く使うことが可能で、価値を落とすことも少なくなるのです。
基礎は建物にとって、「安定させる」ための非常に大切な部分であることを、覚えておきましょう。
地震や台風などから建物を守る
基礎は建物を、「地震や台風などから守る役割」も担っています。
ところで、基礎には2つの性質があると言えます。
「建物の沈下を防ぐ点」と「建物を浮き上がらせない点」です。
まず第一番目の「建物の沈下を防ぐ点」ですが、建物の自重や外から掛かる力を、地面に分散させる機能とも言えます。
建物の重量は非常に重く、風などの外力は非常に強いのですが、基礎を介することによって、力を上手に分散させ、建物の沈下を防ぐのです。
次の「建物を浮き上がらせない点」ですが、基礎の重量により建物を浮き上がらせることを防ぎます。
台風などで横からの力が働く場合、「てこの力」の様に働き、建物に浮き上がらせる力を生みます。
そして、基礎の重量が足りない場合には、建物そのものが浮き上がってしまい、場合によっては倒壊のリスクさえ出て来ます。
しかし、基礎がしっかりしていれば、基礎自体の重量により、建物の浮きを抑えることが可能となるのです。
さて、先に挙げました「地震や台風などから守る」のは、沈下を防ぎ、建物を沈ませず浮かさ無いことに他なりません。
つまり、地震や台風が来たとしても、基礎がしっかりしていれば、地面に沈下させず、建物を浮かさないので、地震や台風などから建物を守ることが出来ると言えるのです。
基礎の種類
ここで、基礎の種類について解説したいと思います。
住宅の基礎の種類は主な物として、「べた基礎」と「布基礎」があります。
また、布基礎には重量ブロックを使った物もあります。
それぞれについて見て行きましょう。
べた基礎
べた基礎とは、住宅の床下全面に鉄筋を敷き、そこにコンクリートを敷いた基礎と言うことが出来ます。
特徴として、床下全体にコンクリートが打ってあるため、建物の自重などの「上からの力」を分散することが出来ます。
このため、例えば地震の様な振動が発生したとしても、建物を安定させることが出来ます。
また、床下全面がコンクリートとなるので、基礎の自重が増え、横からの力が来ても、倒れにくくなります。
ただし、コンクリートの量が増えてしまうので、コスト的には上がってしまいます。
尚、今の新築住宅はべた基礎で作る場合が多いです。そのため、今の住宅は安定性が非常に高いです。
布基礎
布基礎とは地面に板状に建てた基礎を指します。
配置は住宅の外周部分や、間仕切り部分の下となります。
べた基礎と違って、家の床下全面がコンクリート敷きでは無いのが特徴です。
重量ブロック基礎
重量ブロック基礎は、布基礎を重量コンクリートブロックで造った基礎です。
今では使われてはおらず、築40~50年クラスの物件で見られます。
今の例としては、住宅では無く、物置やサンルームなどの小規模な建物で見ることが出来ます。
今の住宅の基礎について
ここで、今の住宅がどの様な基礎になっているかを解説します。
基礎は住宅の耐震性や耐風圧を決める上で非常に重要な部分です。どの様な構造になっているのでしょうか。
地耐力に合わせることが必須
基礎を考える上では地震の話を抜くことは出来ません。
基礎は耐震性に大きく関与しているからです。実際、基礎の構造は、木造住宅の場合には法的な規定があります。
「地耐力に応じた基礎構造とする」ことが謳われているのです。
そして、基礎を決める上で地盤の調査が行われることになるのです。
ちなみに、都内の場合は土地が狭いこともあって、3階建て住宅が増えています。
3階建て住宅の場合、敷地面積が狭い一方で建物重量が重いので、べた基礎がメインとなります。
そのため、縦に長い建物であっても、地震や台風に強いです。
べた基礎と布基礎のどちらを取るか
さて、ここで考えたいのが、「べた基礎と布基礎のどちらを取るか」という問題です。双方には一長一短があるので、選択は難しいと思われます。
しかし、都内で住宅を構えるのであれば、布基礎よりもべた基礎がおすすめです。
べた基礎はコンクリートを建物の床下全面に敷き、なおかつ配筋も入れるのでコストが掛かりますが、耐震性の向上やシロアリ対策などにおいて、布基礎よりも有利だからです。
まず耐震性ですが、布基礎の場合には地盤がよほどしっかりしていないと、布基礎の配置にズレが生じる場合があります。
極端かも知れませんが、長方形が平行四辺形に変わる「ひずみ」です。ひずみの量はもしかすると少しかも知れませんが、建物に大きなダメージを与えます。
尚、この点でべた基礎は下に配筋とコンクリートがあるので、ひずみは走りにくいです。
また、シロアリ対策も非常に重要な意味を持ちます。
シロアリは地面から上って来ますが、布基礎の場合だと、基礎の内側から上がるリスクもあり、被害が見つかりにくいです。
しかし、べた基礎であれば、全面をコンクリートでカバーしているため、建物まで上がって来る確率は低くなります。
この様に、べた基礎には大きなメリットがあり、建物の強度や耐久性などを考えるならば、推奨できるのです。
基礎リフォームの必要性
ところで、基礎にもリフォームが必要となる場合があります。
例えば、築年数が古く、今の耐震基準を満足していないと思われるケースです。
前述の通り、基礎は建物の安全性を考える上で非常に重要な部分です。
それだけに、古い住宅の場合にはリフォームが必要となるのです。
基礎の補強として
古い建物の場合、べた基礎よりも布基礎の場合が増えて来ます。
そして、見るからに基礎の強度が低いケースもあります。
その様な場合には、基礎の補強が必要です。
基礎補強のリフォームは、床下部分に配筋を敷き、その上にコンクリートを打ちます。
そうすると、べた基礎と同じ様な状態となり、基礎自体にひずみが入りにくくなります。
シロアリ対策として
前述の通り、シロアリは基礎の内側から入って来ると、被害が分かりにくいです。
そのため、建物の床下全面を覆うのがベターと言えます。
その点で、基礎をべた基礎と同様にリフォームするのが推奨されます。
シロアリ被害は床下の部材をスカスカにし、場合によっては建物の強度を著しく下げてしまいます。建物を守る上でも、基礎リフォームは重要となるのです。
基礎リフォームをする前にしておきたいこと
ここで、基礎リフォームをする前にしておきたいことを説明します。
基礎リフォームは見えない部分でもあるので、しっかりした施工が必要で、そのためには知識があると有利になるのです。
信頼できる業者を選ぶ
まず、大きなポイントとなるのが業者選びです。ここで誤ってしまうと大損する可能性があります。
見積書がしっかりしているか、施工の条件をしっかり説明してくれるかで、業者の質が分かって来ます。
価格に透明性があり、デメリットまでしっかりと説明してくれる業者を選びましょう。
尚、業者の口コミ情報なども参考になります。
事前にチェックしておくことがおすすめです。
価格だけで選ばないこと
リフォーム工事を価格だけで選ぶと、ひどい目に合うことがあります。
特に他の業者よりも安い価格を出して来る業者は要注意です。
価格を知るには、他の業者の価格を見ることも必要です。
複数の業者から見積もりを取り、価格帯を出してから業者を選ぶのがおすすめです。
事前に勉強しておくのがベター
基礎リフォームにあっても、施工の品質チェックのために、施工の流れを知っておくのがおすすめです。
リフォームに当たるのは、確かに業者なのですが、工事の内容を知っておけば打合せなどに有利です。
また、分からない点を聞く場合も、知識が無いと質問しようがありません。
質問をするに当たっても、知識が必要となるので、事前に勉強しておきましょう。
まとめ
住宅の基礎は非常に大切な部分であることが分かったと思います。
また、古い住宅の基礎リフォームの必要性なども、知識が深まったものと思います。
今は中古住宅を購入する場合の方が、コストメリットが大きい家づくりをすることが出来ます。
ただし、その点で基礎について手を打たないと、せっかくの家が台無しにさえなり得ます。
基礎について勉強し、より安全な家を造りましょう。