住宅の内装材には様々な種類の物があります。ビニールクロス、布クロス、紙クロス…と、種類もグレードも様々です。
ところで、内装材は壁クロスがポピュラーなのですが、壁クロスだけではありません。左官職人が「塗る素材」もあるからです。
ここで取り上げる漆喰は、「塗る内装材」の代表格では無いかと思われます。
ただ、漆喰は昔から使われていた素材ながら、今の住宅を見る感じにおいては、あまりポピュラーとは思いにくい現実もあります。
これには、漆喰がどの様な素材かが知られていないことも、原因の一端としてあるかと思われます。
それでは漆喰とは、どの様な素材なのでしょうか。ここでは、漆喰について解説したいと思います。
漆喰とは何か
まずは漆喰とは何であるかについて紹介したいと思います。
漆喰…と聞くと「白い素材」であることは思い出せても、詳しくは知らない人も多いかと思います。
今の多くのマンションや建売りの戸建て住宅では、あまり使われていないからです。
漆喰の歴史
漆喰と聞くと、例えば姫路城の様な歴史的建築物を思い出す人も多いかと思います。
日本の城の白さは確かに漆喰の色だからです。
実際にその通りで、日本では昔から漆喰は建物の外壁に使われて来た歴史があります。
ただ、それを聞くならば日本の城が建てられた時代に使われ始めた…と言った具合に受け取られるかも知れません。
はじめて漆喰が使われたのは日本の城が建てられた何百年も昔…といったイメージになるかとも思います。
しかし、漆喰の歴史は、実は更に大昔にさかのぼります。
実は漆喰が使われたのは、日本の歴史よりも更に古く、エジプトのピラミッドの時代です。ですから5000年くらいの大昔から使われているのです。
ちなみに、日本の歴史を見るならば、聖徳太子が生まれたのが西暦574年とも伝えられます。聖徳太子の時代から、更に4000年以上前からですので、実に長きに渡って使われて来た素材であることが分かります。
漆喰の成分
次に、漆喰の成分について説明します。
漆喰の主成分は水酸化カルシウムという物質です。
カルシウムと聞くと、骨に含まれている物質を連想するかも知れませんが、カルシウムはそれだけでは無く、身の回りの様々な物に含まれています。
漆喰もカルシウムの含まれる物質の1つなのです。
ところで、水酸化カルシウムを含む、非常にポピュラーな素材があります。…コンクリートです。
コンクリートはセメントと砂利と砂を水で練って作る資材ですが、水酸化カルシウムを多く含んでいます。
そして、漆喰も同じ物質を多く含んでいます。
ですから、漆喰はコンクリートの遠い親戚と言えるかも知れません。
ただし、漆喰は作る時に糊やスサと混ぜられます。
砂利や砂と混ぜるコンクリートとは、やはり違って来ます。
漆喰のメリット
漆喰は昔から使われて来ただけあって、建築物の様々な部分で利用されています。
ここで、漆喰の持つメリットについて取り上げてみましょう。
高級感
まず挙げられるのが「高級感」です。
例えば、漆喰を塗った壁を見てみると、ビニールクロスを張った壁よりも風格が感じられます。
また、漆喰の場合は塗るパターンなども変えることが可能となるので、表面を面白く仕上げることが可能です。
そして、天然素材の持つ温かさも魅力的です。
この様に、漆喰は面白さや温かさをも備えている、高級感の溢れる素材であると言うことが出来ます。
防水
漆喰は水に強くて防水性の高い材質です。
ですから、屋外を含む建物の様々な部分で使うことが可能です。
壁にも安心して使うことが出来る素材なのです。
ちなみに、昔の建物の場合、屋根の瓦の隙間部分に漆喰を充填して、中への水の侵入を防いでいました。
これは、漆喰の「水の強さ」を証明する良い例と言えるでしょう。
湿度を調整する
漆喰の大きな特徴に、無駄な湿気を吸い取る性質があります。
この性質によって、部屋の中の調湿が可能です。
例えば、雨の多い時期などは室内でもジメジメすることが多いです。
この時、部屋の壁を漆喰で仕上げていると、無駄な湿気を漆喰が吸ってくれて、部屋のジメジメが和らぐのです。
湿気が高くなると不快指数が高くなる物ですが、漆喰で壁を作っているのなら、空気の余計な湿気が減るので、過ごしやすくなるのです。
カビなどを防ぐ
条件にもよりますが、湿気が室内にこもってしまうとカビの発生に繋がってしまいます。
例えば、湿気が高く、気温も高い条件下の場合、食品などにカビが生えやすいです。
ところで、漆喰は余分な湿気を吸ってくれるため、カビを防ぐのに効果的です。
湿気と気温が高くて食品にカビが生える条件が揃っている状態であっても、壁に塗った漆喰が余分な湿気を吸い取るので、カビの生える確率が低くなるのです。
アレルゲン対策
カビは空気中に胞子を撒き散らします。
そして、空気中に浮遊するカビの胞子はアレルゲンになります。
しかし、部屋の壁を漆喰で作るならば、湿度が調整されてカビの繁殖も抑えられるため、胞子の発生も抑えられます。
その結果、アレルゲンが室内の撒き散らされることも少なくなり、身体に優しい部屋となるのです。
防火
漆喰は燃えない素材です。そのため防火性能も高いです。
ですから、火の心配のある部屋に使うと安全性が上がります。
室内を燃えにくくすることは、安全対策上、非常に大切なことなのです。
漆喰で「呼吸する壁」を作る
前述の通り、漆喰には調湿の効果があるため、壁に塗るならば「呼吸する壁」を作ることが可能…とも言えます。
それでは、この壁はどの様な効果があるのでしょうか。
「呼吸する壁」の効果
前述の通り、漆喰には調湿の効果があります。
そして、その副次的な機能として、カビの発生を抑え、アレルゲン物質の放出も少なくします。
つまり、身体に優しい部屋とすることが可能なのです。
また、その効能は身体への作用だけではありません。
精神的にも良い効果を得ることが出来るのです。
例えば、湿度が高くてイライラする時など、湿度と温度が適度に保たれた部屋に行くならば、そのイライラは緩和されます。
そして精神的効能は安眠にも繋がり、身体を休めるにしても条件が良くなるのです。
「呼吸する壁の部屋」はどんな人に向くか
次に、この「呼吸する壁の部屋」は、どの様な人に向くかを考えてみましょう。
先にも挙げた通り、この部屋は精神的にも、肉体的にも良い効能が期待出来ます。
そのため、多くの人におすすめ出来る部屋となります。
例えば、仕事で疲れた会社員、勉強に疲れた学生さん、…肉体的、精神的に疲れた人にとって、この部屋はオアシスになることでしょう。
また、小さい子供にも、アレルゲンなどの観点からすると、良い部屋にもなります。
カビの害の抑えられた部屋は、子供たちを安心して遊ばせることの出来る、より良き空間ともなるのです。
漆喰を使う上での注意点
さて、今まで挙げて来た様に、漆喰は非常に良い素材と言うことが出来ます。
しかし、いくら漆喰と言っても「パーフェクトな素材」とまでは言うことが出来ず、やはり欠点は存在します。
素材を上手に使うためにも、その欠点をしっかりと知っておくことが必要です。そこで、漆喰の欠点について、ここで取り上げてみたいと思います。
汚れに弱い
漆喰の壁は表面に味がありますが、残念なことに弱点があります。
「汚れに弱い」点です。特に、コーヒーなどをこぼしてしまったシミなどは、落とすのに手間が掛かります。
尚、漆喰の汚れには対しては、サンドペーパーを掛けたり、上から別の漆喰を塗って対応するのが良いのですが、限界はあります。
また、漆喰に現場で着色してパステル系の色の壁を作る場合がありますが、この場合には汚れを消すのが難しくなります。
と言うのも、仮に汚れの上から新たに別の漆喰を塗るにしても、調色が難しく、塗るとその部分だけが目立つ可能性があるからです。
キズの修繕が難しい場合もある
漆喰は表面が固いのでキズに強い素材と言うことが出来ます。
しかし、仮に誤って尖った物で、ガリッと表面にキズを付けてしまった場合には、修正が難しくなります。
と言うのも、傷を治そうとしてサンドペーパーで擦ったとすると、周囲のテクスチュアと違ってしまい、その部分だけ目立つ様になるからです。
また、先にも挙げた様に、着色した漆喰の壁にキズを付けてしまった場合には、やはり修繕は難しくなります。
壁クロスに比べて工期が長い
壁クロスは多くの住宅の内装材に使われています。
建売りの一戸建て住宅などの内部を見学してみると、一般の家であれば、壁クロスが施工されています。
さて、漆喰と壁クロスを比較した時、味わいなどにおいては漆喰の方に軍配が上がるでしょう。
しかし、勝ちにくい項目も、やはり存在します。…「工期の長さ」です。
この工期の長さは注文住宅などの場合においては、もしかしたらあまり問題にはならないかも知れませんが、リフォームの時には不利な点となります。
と言うのも、工期が長くなると、施主の負担する工事費用が膨らんでしまう可能性があるからです。
細かいヒビが入ることがある
例えば、木造住宅の柱などに漆喰を塗った場合、湿度などにより木は太くなったり細くなったりします。
しかし、漆喰はこの収縮についていけず、時としてヒビが入ってしまうことがあります。
これは壁クロスで対応する場合には、ヒビが入ることは、まずありえません。と言うのも、壁クロスは元来が柔軟なシート材であるからです。
確かにヒビに関しては、上から新たに漆喰を掛けるなどの補修手段はあるのですが、ヘアークラックと呼ばれる細かいヒビのカバーは難しいです。
まとめ
漆喰について取り上げて来ました。
漆喰は古いながらも高性能な資材であることが分かったことと思います。
また、漆喰の壁は高級感であり、健康にも良いことも理解したことと思います。
ちなみに、漆喰を中古住宅に使うと、使い方によってはレトロな温かい空間演出が可能です。
ですから、家づくりをするならば、推薦されるべき内装材と言うことが可能なのです。
ぜひ、漆喰を上手く利用して、「一枚上手」の家づくりをしましょう。