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家づくりの知識

室内が良くなる魅力的な塗壁素材、漆喰と珪藻土の特徴

住宅の内装材には「飽きの来ないデザイン」が大切です。仮にクセの強すぎるデザインにしてしまうと、生活空間が落ち着かなくなってしまったり、疲れさえもします。そのため、例えば壁紙などにおいてもホワイト系の落ち着いた物が良く使われます。

ところで、そこに「個性」を強調し、しかも飽きの来ない、そして1枚上手の住空間が演出可能な壁素材があったら、どうでしょうか。…これが今回紹介する塗壁、特に漆喰と珪藻土の塗壁です。塗壁は壁紙まではポピュラーでは無いかも知れませんが、高い人気を誇る壁材です。
それでは、漆喰や珪藻土には、どの様な特徴があるのでしょうか。…ここでは漆喰と珪藻土に焦点を当てて解説したいと思います。

漆喰・珪藻土の塗壁

漆喰・珪藻土の素材の特徴の前に、それぞれの素材で作る塗壁について再確認したいと思います。

優しい自然素材

一般の内装材、例えばビニールクロスなどは石油化学製品が多いです。今の壁紙はデザインに工夫を凝らしているため、一見すると自然素材の様にも見えますが、やはりどことなく違います。
その点、漆喰や珪藻土の塗壁は自然素材ベースの壁ということもあり、雰囲気がずいぶん違います。
尚、後述しますが、漆喰や珪藻土には空気をきれいにする作用があります。そのため、漆喰や珪藻土の塗壁の部屋は、優しい自然の雰囲気を味わうことが出来るのです。

伝統的な材料

一般的な壁紙、例えばビニールクロスなどは近年になって発展してきた素材です。しかし、漆喰や珪藻土は最近開発された素材ではありません。非常に古くから使われて来た素材なのです。
例えば、漆喰においては、日本の伝統的建築物において多く使われています。古い町並みを歩いていると、白く塗った土蔵を見つけることがあります。また、珪藻土に至っては、古代ギリシャの建築物に使われていた記録が残っています。

多彩なデザインを楽しめる

ところで、内装材はデザインも楽しみたい物です。快適な生活空間のため、落ち着いた雰囲気を出すため、それは重要と言えます。
さて、漆喰も珪藻土も、塗壁にすると多彩な表情を味わえます。もしかすると、漆喰は土蔵の外装などのイメージが強すぎて、室内の塗壁に使った場合がイメージ出来ないかも知れません。

しかし、内装としての塗壁は左官職人のセンスとコテの運びを結集した作品とも言える物です。そして、その熟練の技術は、多彩なデザインを生み出し、住む人に多彩なデザインの部屋を提供してくれるのです。

リノベーションにもおすすめ

塗壁はリノベーションにもおすすめの素材です。特に、レトロなデザインの部屋を演出するのに向いています。
また、最近では築50年を超える様な古民家を利用したリノベーション物件が見られますが、その様な物件に漆喰や珪藻土の塗壁をモダンなデザインで作ると、おしゃれな住空間が出来ます。「和とモダンの融合」とも表現出来るその空間は、日常を素敵に演出してくれることでしょう。

壁紙と比べてみると

それでは、これらの塗壁は壁紙と比べてどう違うのでしょうか。
素材としては前述の様に、漆喰や珪藻土は歴史的な素材です。しかし、壁紙も昔からはありますが、ビニールクロスの様な物は最近の物です。
また、性質に関してですが、大きく違う点は調湿性がある点です。壁紙にも特殊なポリマーを配合させて調湿性を持たせている物もありますが、漆喰や珪藻土は本来の性能として備わっています。
ですから、壁紙との違いを比較してみると、壁紙でも特殊な物…機能性壁紙の持つ性能を、漆喰や珪藻土の塗壁は自然の力として持ち合わせていると言えるでしょう。

漆喰について

それでは、漆喰とはどの様な物なのでしょうか。

どの様な素材か

漆喰は水酸化カルシウムが主成分の素材で、原料としては消石灰から作られます。消石灰は石灰岩から作られるので、漆喰は天然素材に近い物と言えるでしょう。
ただし、消石灰はそのままでは壁材としては使えません。糊やスサを混ぜて使用します。
施工は左官職人のコテにより行われます。ですから、壁紙などとは違い、職人の技術が映える素材とも言えるでしょう。

漆喰のメリット

漆喰のメリットは「調湿効果」がある点、「火に強い」点、「空気をきれいにする」点、そして「消臭性」などがあります。
まず第一の調湿効果、これは室内の湿度をコントロールする機能です。つまり、空気中の水分が多い場合には素材内に取り込み、水分が少なくなると持っていた水分を放出します。これにより室内の空気環境は快適になります。湿度はウィルス増殖やカビの発生にも影響しますので、健康的な部屋造りにも有効な素材とも言えます。

次の防火性ですが、漆喰は基本的な素材が鉱物による物なので燃えません。ですから、仮に室内で火災が発生したとしても、壁伝いには火が広がらないのです。この特徴は、特に火災時の避難の際に重要となる特性です。と言うのも、火がまわるスピードによって、避難の成功率が違うからです。そして、避難の成功率が高くなることは、その建物の安全性にも影響します。

空気をきれいにする点ですが、これは漆喰の抗ウィルス性に基づく機能です。漆喰の主成分である水酸化カルシウムは高いアルカリ性を示します。この環境は細菌などの生育を阻みます。そのため、室内の空気中の細菌増殖が抑えられ、空気がきれいな状態でキープされるのです。
そして消臭性です。漆喰はアルカリ性の高い物質です。高いアルカリ性は消臭効果を持ちますが、この性質は漆喰においても発現されます。

漆喰のデメリット

漆喰にもデメリットはあります。大きな物としては、「施工性の良く無い」点、「ひび割れの起きる場合がある」点、人体に良く無い点などです。
まず、施工性ですが、漆喰は左官職人のコテによって仕上げられる物です。そして、湿式の施工でもあるため、工期にも時間が掛かります。この点は壁紙とは完全に違います。壁紙は技量にもよりますがDIYでの施工も可能ですので、要求される技術力が相当に違うことを物語っていると言えます。


また、ひび割れの起きる可能性がある点もデメリットとして数えられます。と言うのも、例えば木造建築物であれば温度や湿度によって微妙ではありますが伸縮します。そして、この伸縮率は漆喰とは違います。…この差がひび割れの原因となり得るのです。その一方で、ビニールクロスなどは壁材の伸縮に追随します。そのため、壁紙はひび割れが起こりにくいです。

尚、漆喰は身体に良く無い物質でもあるので注意が必要です。と言うのも、漆喰は強いアルカリ性なので、目に入ったり吸い込んだりすると損傷したり傷んだりします。取り扱い注意の素材です。

どの様な仕上げが可能か

漆喰の壁…と聞くと、土蔵の壁を思い出し、フラットな仕上げを連想するかも知れません。確かに漆喰はフラットな面を強調することも可能です。しかし、漆喰の仕上げはフラットな物だけでは無いのです。

例えば、「敢えてコテの跡を残す」のも手法の1つですし、コテでは無くて「刷毛で仕上げる」のも面白いです。また、フラットでは無く、敢えてガサガサな仕上げとし、壁面を面白くすることが可能です。
その様に、漆喰の仕上げはバリエーションに富むため、シンプルな仕上げも、変化に富んだ仕上げも可能です。そのため、部屋の雰囲気も好みに合わせることが可能となります。

珪藻土について

次に、珪藻土について紹介します。

どの様な素材か

珪藻土は植物性の微生物である藻類由来の土です。大昔の海や湖底に多く住み、死んだ物が堆積して出来たと言われています。ただし、珪藻土は植物由来の素材ではありますが、木材などとは完全に性質が異なります。と言うのも、植物は有機物ですが、珪藻土は違うからです。…珪藻土は湖底などに沈んだ珪藻が、堆積されて行く中で有機物の部分は分解されてしまい、二酸化ケイ素を主成分とする「殻」のみとなった物だからです。
さて、壁材としての珪藻土ですが、これは珪藻土だけでは固まりません。固めるための副資材を混ぜ合わせてから壁材として使います。

珪藻土のメリット

珪藻土のメリットは漆喰の壁のメリットと非常に良く似ています。つまり、「調湿効果」がある点、そして「火に強い」点、そして「空気をきれいにする点」がメリットとして挙げられるのです。
例えば、調湿効果であれば、漆喰の持っている様な性能を珪藻土も持っています。ただし、調湿性は珪藻土が漆喰よりも優れます。ですから、湿度の高くなりがちな部屋に使うと良いでしょう。
また、珪藻土も二酸化ケイ素が主成分となっているので、燃えません。また、珪藻土も漆喰と同様に空気をきれいにする点がメリットとして挙げられます。

珪藻土のデメリット

珪藻土は漆喰と同じ様な性質がありますが、デメリットの点で違います。と言うのも、漆喰と違い「水に弱い」点や「カビに弱い」点があるからです。
水に対しては、漆喰は非常に強く、建物の外壁などに昔から使われて来た実績があります。しかし、珪藻土の場合は水には強くありません。ですから、外壁には使えません。
また、カビにも弱い欠点があります。珪藻土は湿度が高いと水分を含むのですが、そのキャパシティを超えてしまうと、カビの発生を招くこともあるのです。

どの様な仕上げが可能か

珪藻土も漆喰と同様に、様々なテクスチュアを楽しむことが出来ます。フラットに塗るだけでなく、敢えてコテの跡を残すのも面白いでしょう。
ただし、珪藻土は漆喰の様な耐水性までは持ち合わせてはいませんので、テクスチュアに気を付ける必要も出て来ます。

まとめ

漆喰と珪藻土を見て来ました。どちらも魅力的な内装材として使えることが分かったことと思います。
また、両者の似ている点や違い…漆喰の強アルカリに起因する消臭や取り扱い注意の点、また珪藻土の持つ優れた調湿性や水に弱い点…なども把握出来たことと思います。
いずれの素材も弱点はありますが、素敵に部屋を彩ってくれます。家の雰囲気造りに有用な素材なので、内装に使うのをおすすめします。