浸水想定エリア 建物の建て方
令和元年の台風19号で床下浸水が注目され数多くの被害が出ました。この災害により現在河川付近に住んでいる方は非常に不安になったと思います。過去に水害にあった地域は河川の幅を広げることや、堤防を作る対策してきました。しかし近年の異常気象により毎年水害が報告されるところを見ると万全という分けではなさそうです。
「別の土地に移りたい」という不安の声も多く聞きますが長年住んだ住み心地の良い土地を簡単に離れることは難しいかもしれません。また「まだ土地を購入したばかりで引っ越しなんて無理」という方も多いでしょう。今回の記事では川沿いや水路沿いに建築する場合のメリット・デメリットや工夫をご紹介していきますので是非参考にしてみてください。
川沿いや水路沿いの土地のメリットとは
川沿いや水路沿いの土地に住むメリットとは何でしょうか。川沿いの土地は風通しが非常に良く夏場などでもヒートアイランド現象が起こらず非常に過ごしやすい環境にあります。また建物が近隣に立ち並ぶ心配もなく日当たりも非常に良好です。
建築に対しての法規制も緩和措置がありますのでゆったりとした建物が建てられるでしょう。その他近年ではウォーターフロントなどの商業関係が発達する場合も多く利便性に非常に優れている土地も非常に多いと言えます。昔から川沿いの地域は商業や文化が発展しています。その分色々と最先端の施設や学校・病院などがあり環境としては非常に良いと言えるでしょう。
川沿いや水路沿いの土地のデメリットとは
川沿いや水路沿いに建築する際のデメリットはまず「虫」の存在があるでしょう。ベランダなどに常夜灯を付けていると虫が沢山寄ってきて掃除が非常に面倒になります。川沿いに住んでいる場合は常夜灯を避けて赤外線センサーライトなどにする事をおすすめします。そして皆さん一番気にしているのが水害です。
最近でこそ「ハザードマップ」が注目されるようになりましたが「ハザードマップ」は水害が起こらない時期は気にも留めなかった方がほとんどです。川幅や深さにもよりますが川沿いや水路沿いに住む場合のデメリットとしては「水害」による浸水被害を念頭に置いておくべきだと言えるでしょう。
ハザードマップを確認しよう!
「ハザードマップ」という言葉は聞いたことがあるでしょうか。私たちが住んでいる地域にはハザードマップという災害危険地域を表した地図が必ずあります。最近ハザードマップ=水害と考える方も多いようですがハザードマップは土砂崩れなどの危険地域も表していますので高台に住んでいる方も一度は目を通しておくことをおすすめします。
ハザードマップは各市町村で作成している地図になり自然災害による被害予想地域を表しているだけではなく避難場所、避難経路なども図示されています。自分の住んでいる地域名でハザードマップを検索するとすぐに出てきます。
◇浸水予想エリア1m~2.5mの範囲
水害のハザードマップを確認すると色々な色分けがされています。色が薄いと浸水深が浅く色が濃いと浸水深が深くなっています。この中では浸水深が1m〜2.5mのエリアが最も多く書かれているはずです。住んでいるエリアがこの浸水予想1m〜2.5mのエリアに該当する場合は水害に対して注意しておきましょう。
また避難方向なども矢印で図示されていますので普段の交通状況や抜け道なども把握しておくと万が一の時に役立ちます。
浸水エリアで家の建て方は3種類
「長年住んでいた土地」「生まれた時から住んでいた土地」このような土地は床下浸水や床上浸水の被害に合う危険があるとしても愛着があるため簡単には手放すことが難しいでしょう。
しかしこのような水害に弱いと思える地域や土地でも建築方法によっては水害に強い建物をつくることが可能なのです。
これから3種類の建築方法を解説していきますので建築業者とよく打合せしてみてください。但しこの方法は大手ハウスメーカーなどが嫌がるケースもありますので注意してください。地元の工務店などが柔軟に対応できる方法と言えるかもしれません。
01 土盛りをして建築するプラン
建築地をある程度土盛りしておくと浸水被害に合いにくいと言えます。土盛りの高さは色々ありますが0.5mから1m程度が無難だといえます。但し地域によっては土盛りを禁止していたり規制があったりするので注意してください。
また土盛りをすると当然廻りの土地より高くなりますから土留めなどのコンクリート塀を作る必要があります。その他土盛りだけで建築してしまうと地盤が柔らかいため地盤改良工事などの施工も必要になってくるでしょう。これらには当然費用が発生しますが水害にあってしまい建物を建て替える時に発生する費用よりはずっと安価に済むと言えます。
02 RC造の地下車庫+木造2階建てプラン(高基礎)おすすめ!
高台の分譲地などでコンクリート造の車庫がある上に2階建ての建物があるような光景を見たことはないでしょうか。この建築方法であれば床上浸水するほどの水害にあったとしても住居部分は問題ないので安心できる工法と言えます。建築基準法でいうと3階建てという扱いになり構造計算などが必要になりますが水害に対しては安心できる方法でしょう。
注意する点としては近隣との高さ関係や用途地域など法規制が厳しい地域だとある程度高さ制限がかかりますので設計事務所とよく打合せをする必要があります。また同じ考え方でも車庫部分を木造としてしまうと浸水した場合木材が濡れてしまい腐食の原因になりますので注意が必要です。
03 鉄骨3階建てプラン(1階水廻り、2階リビング、3階居室)
鉄骨3階建てとした場合も水害に対して安心できる建築方法でしょう。この場合1階部分は水回りなどをメインとしてLDKなどの居室部分は2階以上にします。このようにすれば万が一夜中に浸水したとしても居室部分は浸水しないので安眠できると言えます。また鉄骨建てとすることにより水害で柱部分が濡れても腐食する心配がありません。
水回りだけのリフォームで済みますのでリスク回避できると言えます。注意点としては2階部分にも最低限洗面台やトイレ、できればシャワールームなども備えたいところです。また階段部分も鉄骨製の階段が望ましいと言えるでしょう。
川など水に近い土地は、地盤が弱い可能性があります。建て方も参考になると思いますので読んでみてください。
鉄骨大手ハウスメーカーでは建築できない理由
前述したような建築方法は工務店や中小の建築業者は比較的得意とする建築方法です。
一方大手ハウスメーカーの場合これらの建築方法は拒否される可能性があります。大手ハウスメーカーなのになぜでしょうか。これには色々と理由があり大手ハウスメーカーでも悩みの種かもしれません。もし仮に「当社でも作れます」という返事が出たのであれば念のため工務店などと相見積もりすることをおすすめします。
◇技術がない
大手ハウスメーカーは素晴らしい技術がありますがそれは標準商品に限ります。規格外の技術はスキルの少ない社員などには荷が重く、対応できないことも多いでしょう。今回ご紹介した建築方法は特殊な建築方法になります。大手ハウスメーカーでは標準仕様の住宅の技術やマニュアルはきちんと完備されていますが特殊な建築方法についてのマニュアルは完備されていないことが多くあります。よって1階部分をRC造とした昆構造(こんこうぞう)と呼ばれる建築方式の技術やマニュアルなどがありません。これらの技術不足などにより大手ハウスメーカーから断られるケースがあるのです。
◇職人がいない
大手ハウスメーカーでは規格型住宅は非常に得意ですしその職種に携わる職人も多数存在します。しかし特殊な建築物になると職人の付き合いも極端に少なく簡単に任せられる職人がいないようです。運良く職人が見つかったとしても会社との契約作業が非常に複雑なので定期的な仕事がないと職人も嫌がることがあります。このように職人と密な関係になっていない大手ハウスメーカーでは特殊な建築物が苦手だと言えます。
◇保証ができない
一般的な規格住宅の保証は大手ハウスメーカーでは完璧に近いといえるでしょう。この保証に関しては色々な職人や技術者が知恵を出し合い法律をよく吟味して作った内容になります。このような保証の完成形を作るのには非常に時間と手間がかかります。
よって特殊建築を行う度にこのような保証体制を見直すことは大手ハウスメーカーでは行わないでしょう。
数年に一回程度ある特殊な建築物の為にハウスメーカーは中々動いてくれません。このように保証体制が明確にできないため特殊建築に関しては保証対象外と言われるケースがあるのです。
大手ハウスメーカーの坪単価と地元の工務店の坪単価の違い
今回のような特殊建築物についての坪単価はどうでしょうか。確かに特殊になりますので通常の住宅よりは坪単価は上がるでしょう。この坪単価の価格設定にも大手ハウスメーカーと地元工務店では全く違うことを念頭に置いておきましょう。
◇大手ハウスメーカーの価格設定
大手ハウスメーカーの価格設定の仕方は基本的に大量生産・大量発注という考え方で価格設定をしていきます。これにより流通業者や職人は年間の利益などを考えて比較的安価に価格設定を行います。その価格に下請け業者の利益、孫請け業者の利益が上乗せされてきますので最終的なユーザー側への提示金額は当初の流通業者や職人が出した金額の3倍近くに設定されてきます。
特殊建築物の場合は定期的な利益が見込みにくいという事と保証体制の検討ということもあり大手ハウスメーカーとしては金額もかなり高めに設定されてユーザー側に反映されるのが現状と言えるでしょう。
◇地元工務店の価格設定
地元工務店などの場合の価格設定はどうでしょうか。地元工務店の特徴としては少数精鋭のパターンが非常に多いと言えます。特殊建築物でも経験豊富なスタッフや職人との密なつながりが多く見受けられます。価格設定としては流通業者と職人に会社の利益を上乗せするだけですのでユーザー側に提供される金額は大手ハウスメーカーに比べて安価に設定されることが多いようです。
心配されるのは保証体制ですが各職人ともに責任施工という形で下請負契約をしている工務店がほとんどですので安心して任せることができるでしょう。大手ハウスメーカーのような大量の書類や保証書はないかもしれませんが「ちょっとしたメンテナンス」などは非常に気楽にやってくれますので頼りがいのある存在と言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。水害に強い建物の建築方法や理由などを今回ご紹介しました。特殊建築物に対して見積は3社ほどとって比較検討してみましょう。建築計画を断られる場合もあるかもしれませんが根気よく建築会社を探す必要がありそうです。
住宅に水濡れは大敵と言えますので色々な水害対策を検討してください。例えばエアコンの室外機や給湯器などを高めに設置するなどを行えば多少の浸水被害でも充分に住宅設備機器は使用できるでしょう。近年の異常気象による自然災害は非常に怖くなってきていますので住宅建築の際には手厚い保険に加入する事も災害から身を守るポイントの一つかもしれません。