畳は昔からの和風建築の代表的な材料です。そして、畳は日本の建築物に対しても大きな位置を占めて来ました。例えば、和室の広さは畳の数で勘定されます。…例えば「四畳半」「六畳間」「八畳間」と言った具合にです。また、もっと言うならば、建物を造るモジュールにも関係して来ました。
ところで、その様に建築文化に関わって来た畳ですが、近年の木造住宅においては登場の機会が少なくなっている様にも思えます。床にはフローリング材が貼られるケースが多くなり、畳を使った和室の割合が減っているのです。
しかし、日本の住宅の文化を知ろうとするならば、畳の存在を忘れるべきでは無いでしょう。
そこで、ここでは畳にスポットを当て、その種類とそれぞれのメリット・デメリットを解説したいと思います。
畳について
まずは、畳がどの様な物かについて振り返ってみましょう。
日本の伝統的な床材
畳は日本の代表的な床材です。日本では古くから使われていて、寺社などの歴史的な建造物においても見ることが出来ます。海外には見られない建築素材のため、日本固有の文化と言うことが出来るでしょう。
尚、畳の歴史は非常に古く、現代の畳に近い物は平安時代には造られていました。例えば、古文の教科書などを見ると、源氏物語の絵巻が参考資料として掲載されていると思いますが、そこに出て来る部屋は畳敷きである場合が見られます。畳が日本の文化に、いかに浸透していたか…の証拠と言えるでしょう。
畳表と畳床で構成される
畳は表面部分の畳表と芯材となる畳床から構成されます。畳床で全体の強度を保持し、畳表で足の感触を決めるイメージです。
また、畳の作り方は、基本的には畳表と畳床が裁断され、それらが縫い合わされて作られます。ただし、この縫い付けるのに技術が必要で、職人の技術がものを言います。と言うのも、仮に下手に造った場合には、畳表がしっかりと張られなくなる場合もあり、美観も良く無いですし、安全性などにも影響し得るからです。
畳表による分類方法
では、畳はどの様に分類されるのでしょうか。
これは、畳の構成材によって分けられます。
前述の様に、畳は畳表と畳床で作られます。そして、双方にいくつかの種類があり、その種類によってバリエーションが変わるのです。
では、畳表の分類ですが、これは素材となる「いぐさ」によって基本的には分けられます。概略の分類は以下の通りです。
・国産いぐさ
・中国産いぐさ
・和紙表
次に、畳床の分類です。
・藁床
・建材床
そして、それぞれの素材において、メリットとデメリットがあります。次に、それぞれのメリットとデメリットについて解説しましょう。
畳表1…国産いぐさ
まず第一に挙げられるのが、国産いぐさの畳表です。
畳は日本特有の建材でもあるので、国産いぐさの使用が伝統的と言えます。では、メリットとデメリットには、どの様な点があるのでしょうか。
メリット
まず挙げられるのが、高品質な点です。
後述しますが、畳の品質はいぐさの長さなどにも左右されます。そして、国内産のいぐさは品質の高い物が多いです。ですから、この良質の素材で作られる畳表も高品質な物となります。
また、耐久性の高さもメリットと言えます。
人が畳の上を歩く時、足は畳の上を擦ります。この時、畳表の品質が良く無いと、畳表が痛んでしまいます。そうすると、畳の表面がボロボロにもなり、美観の面で良くなくなります。
しかし、国内産のいぐさの場合には、品質面で高くなるので、耐久性も上がるのです。
デメリット
次に、デメリットです。
国産いぐさのデメリットは、コストが高くなる点が挙げられます。
いぐさは熊本などで生産されますが、品質が良く、人気も高いです。ただし、米の様に大々的に生産される農産物では無いこともあり、コストが膨らんでしまいます。そのため、国産いぐさの畳表は高級品として扱われ、コストが上がります。
畳表2…中国産いぐさ
次に、中国産のいぐさを見てみましょう。
メリット
中国産のいぐさを使うメリットは、何と言ってもコストが抑えられる点です。
いぐさのコストが抑えられるために、畳の材料費が抑えられ、畳そのものの価格も安くなります。
この特性は、例えばリフォーム工事の時に有利になります。と言うのも、条件にもよりますが、畳のコストが抑えられるならば、和室への改装がしやすくなるためです。
デメリット
次にデメリットです。
中国産いぐさのデメリットは、国産いぐさに比較して弾力性などの面で劣る点です。そのため、畳表に使った場合には、強度などにも影響します。つまり、痛みやすくなるのです。ですから、高級感の溢れる和室を造る場合には、中国産いぐさの畳はあまり向きません。
また、色ムラが多いのも難点です。
畳表は直接見える部分です。そのため、色においても均一でなければなりません。仮に色にムラがあると、畳の表面の色も良くなくなり、美観が損なわれます。当然この様な畳は高品質は望めなくなり、普及品となります。
畳表3…和紙表
次に、和紙表について解説します。
和紙表は、和紙を機械で「こより」を作り、化学的処理を加えた物です。いぐさでは無いため、本来の畳では見られない特性を発揮します。
メリット
和紙表は「職人のワザの結晶」と言う物では無く、「工場で製造される工業製品」です。そして、施されている化学処理により、従来の畳には無かったメリットが作られます。
さて、この化学的処理ですが、畳表に次の様な特性を生み出します。
・変色しにくい
・汚れが付きにくい
・ダニやカビが発生しにくい
・耐久性が高い
・床暖房にも使える
特に、ダニやカビへの抵抗性や耐久性の問題は、メンテナンス性にも大きく関係する部分です。建物の維持管理にとっても有利に働く点とも言えます。
デメリット
次に、デメリットについて取り上げます。
和紙表はいぐさを使用していないため、畳本来の特性を持ちません。ですから、設置したとしても、古くからの和室の様相と異なってしまいます。
特に大きな点としては、「いぐさ本来の持つ香りがしない」点があります。
和室に入ると、いぐさ特有の良い香りがします。そして、その香りがあるからこそ可能なこともあることでしょう。和紙表には、その様な和室を造ることは出来ないので、雰囲気を重んじる場合には向きません。
畳床1…藁床
次に、畳床について紹介して行きましょう。
まず藁床ですが、これは日本で作られて来た本来の畳を構成する上で「不可欠な材料」と言うことが出来ます。
では、どの様なメリットとデメリットがあるのでしょうか。
メリット
藁床は植物で作った素材です。ですから、藁の持つ優れた特性が生かされます。具体的に数えると、次の点がメリットとして数えられます。
・調湿機能がある
・耐久性が高い
・復元力が強い
・触感が良い
いずれの要素も和室の快適性を決める要素です。ですから、快適な和室を造るためには、藁床の畳が望ましいのです。
デメリット
次に、藁床のデメリットを挙げてみましょう。
藁は天然素材のため、天然素材ならではのデメリットが出てしまいます。ですから、メンテナンスにも手間が掛かります。
また、確かに藁は比較的手に入りやすい素材なのですが、やはりコストは高くなってしまいます。ですから、良い和室を造ろうとするならば、藁床の畳が必要となり、どうしてもコストに跳ね返ってしまうのです。
畳床2…建材床
次に、建材床について取り上げましょう。
建材床は特殊なボード材などを畳の床に使う物で、藁由来の物ではありません。ですから、藁の場合と全く異なった特性が出て来ます。
メリット
まず、メリットですが、建材床はボード材…つまりは工場で生産される工業製品です。そして、建材床は畳に必要な特性が考えられて作られているため、藁床で出すことの難しい特性を出すことに成功しています。
具体的には、次の要素が挙げられます。
・価格が抑えられる
・ダニの発生リスクが少ない
・断熱性に優れる
この内、ダニの問題は断熱性の良さは、生活空間を造る上で、有利になるメリットです。
デメリット
次にデメリットです。デメリットとしては、藁床で表現しきれない部分が出て来ます。
その最たる物は、「畳本来の触感を持たない」点と言うことが出来ます。
畳は日本の建築文化に欠かせない素材のため、その香りや触感など、人の情緒に訴えて来る特性が重んじられます。ですから、高級畳の様な使い心地…つまり部屋の持つ香りや、歩いた際の感触などが重要視されるのです。
建材床は、その様な点で、藁床の様な「本来の味わい」までをも表現することは出来ません。ですから、高級感の溢れる和室を造る点では向かず、デメリットとして数えられます。
畳の品質について
ここで、畳の品質はどの様な要素で決まるかについて取り上げます。
そして、これも畳表と畳床によって違うので、それぞれについて挙げてみましょう。
畳表はどこで品質が決まるか
畳表は、直接目に映る部分、そして直接肌に触れる部分です。そのため、美観が重要視されます。また、擦れる部分でもあるため、耐久性が求められます。
品質を決めるポイントは以下の通りです。
・いぐさの本数、長さ、質
・経糸の本数、質
畳床の品質について
畳床も歩いた感触などにも影響するので、構造が品質を決める条件として数えられます。ただし、性能が優れているとは言え、建材床は高級畳として使われることは無く、藁床の方が好まれます。
ただ、藁床においても作られ方によって品質は異なります。条件としては以下の項目です。
・重量
・縫い糸間隔
まとめ
畳について取り上げてみました。畳は非常に身近な建材…しかも伝統的な建材でありますので、以上のことから改めて分かったことも多いと思います。もしかしたら意外な発見があったのでは無いでしょうか。
いずれにしても、より良い和室を造るためには、畳の知識は持っておくべきです。ぜひとも畳を再度注目し、どの様な物であるのかを知ることを、おすすめします。