住宅の出入口と言ったら玄関を思い出すでしょうが、もっと広く考えるならば玄関だけではありません。
窓も開口部と考えられます。と言うのも、窓は開ければ風が入りますし日光も入ります。
そして熱の出入口ともなり、泥棒の侵入経路にも窓は選ばれるのからです。
そのため、窓の改良は住宅の様々な性能に関係して来ます。
風に関する物や熱に関する物、そして防犯に関しても大きく関与するのです。
ところで、最近は窓に内窓を取付けて二重窓にする住宅が増えて来ました。
そして、この二重窓化によって窓は大きく変わるとも言われますが、どの様な点が変わるのでしょうか。
窓に関する規制について
実は窓には意外な規制で縛られています。
そのため、簡単に変えることが出来ない場合も結構あります。
では、どの様な点で規制を受けるのでしょうか。
法的規制
窓の制限は意外にあります。
特に火災に関する物が厳しいです。
建築基準法においては防火に関する規定も多く、延焼の恐れのある部分では窓の仕様には気を付けなければなりません。
特に重要なのはガラスの仕様です。
窓サッシのガラスの仕様は決まっていて、基本的には網入りのガラスが使われています。
これは網が入っていれば、火災の際に延焼のリスクを低減させる効果があるからなのです。
マンションの場合
マンションの場合も制限を受けます。
これは、窓サッシが共有部分になるので入居者の自由にはならないのです。
そして、マンションのリフォームは専有部分に限定されます。
そのため、廊下などは勝手に変えることは出来ません。
ところで、マンションの共有部分で分かりにくい部分があります。
例えば玄関ドアやベランダ、そして窓などです。
窓は共有部分に入るため、入居者の都合で換えることは基本的には出来ないのです。
内窓はどう扱われるか
では、内窓はどの様に扱われるのでしょうか。
これは建築基準法の定める防火の点も、マンションに関する区分所有法もクリア出来ます。
と言うのも、防火に関して言えば外側の窓が性能的にはクリアしているからです。
また、マンションの場合には、内窓は窓の内側、すなわち専有部分に取り付けられるので、問題とはならないのです。
なぜ内窓が注目されるか
さて、最近になって内窓が増えて来たのですが、それにはやはり理由があります。
では、なぜ内窓が注目されたのでしょうか。
窓が違うと室内が違って来る
先にも挙げましたが、熱などの出入口にもなります。
つまり、窓の状態によって室内の熱が逃げてしまうのです。
そうすると、冬の寒い日などは外気の低温の影響を受けやすくなり、室内は寒くなってしまいます。
また、逆に夏の暑い日などは外の温度の影響を受けて、室内も暑くなることでしょう。
しかし、窓の仕様を変えて断熱性を高くするならば、この状況が変わります。
つまり、熱の移動を防ぐことが出来る様になり、外気の温度の影響を受けにくくすることが可能となるのです。
内観がおしゃれになる
窓サッシに使われているアルミ材は錆びにくく、キズもつきにくいので、非常に長持ちする素材です。
しかし、歳月が経ってしまうと光沢なども失われてしまい、やはり老朽化してしまいます。
そして、これは室内の雰囲気にも少なからず影響します。
…窓の美しさが削がれているのは、やはり雰囲気的にもあまり良いとは言えません。
また、窓の交換は大変で、やはり費用と手間が掛かります。
しかし、内窓を設置するのであれば窓を交換する程の手間は必要ありません。
価格も手間も抑えられて、しかもおしゃれになるのです。
内窓だとリフォームが容易
さて、ここでリフォームについて考えてみましょう。
窓サッシの性能アップのためにリフォームを検討する場合、内窓を付ける意外の方法としては、主に2つの物があります。
サッシの既存の枠を外して新しい枠に換える方法と、既存の枠に新しい枠をカバーする方法です。
さて、実は窓枠の交換は意外に大変な手間が掛かります。
と言うのも、窓枠周辺の壁までの工事にもなるからです。
また、既存の枠に新たな枠をカバーする場合には枠を外す工程は省かれますが、それでも大変です。
しかし、内窓を付ける場合には、それほどの工事の手間は必要ありません。
簡単に、しかも確実に工事をすることが可能なのです。
尚、施工性の違いは、工事費用にダイレクトに影響します。
と言うのも、施工する部分が多いとそれだけ必要な資材も増えます。
例えば枠を取り換える場合には既存の枠と窓を取り換える必要がありますし、枠をカバーする場合であってもカバー用の枠と窓が必要です。
しかし、内窓であれば既存の窓に取り付けるだけとなりますので、資材の費用も抑えられるのです。
内窓のメリット
さて、ここで内窓のメリットについて挙げてみましょう。
内窓と言うと、補助的な窓を取り付けるだけの様に見えるかも知れませんが、実はいくつかの大きなメリットがあります。
二重窓のメリットについて解説しましょう。
結露しにくい
冬の寒い朝など、昔ながらのアルミサッシの場合には窓の部分に結露している場合があります。
結露は単に掃除が大変なだけでなく、カビなどの発生の原因となるため、可能な限りは防がなければなりません。
さて、二重窓にすると窓に結露が発生しにくくなります。
結露はサッシが外の冷たい外気で冷やされて、内側の湿気を水滴に換える現象と言えるのですが、二重窓にすると外窓と内窓に空気の層が出来るために熱が伝わりにくくなり、水滴になりにくくなります。
防音性のアップ
音は空気中を伝わる空気音と固体を伝わる固体音に分けられますが、外から聞こえて来る騒音は多くが空気音です。
例えば、外での大きな話し声が室内まで聞こえてうるさく感じる場合には、空気音をうるさく感じているのです。
さて、空気音は遮蔽物にぶつかると減衰し、音が小さくなります。
例えば、外から聞こえる話し声は窓を閉めると小さくなります。
これは窓によって音が減衰しているからです。
それでは二重窓にしたらどうでしょうか。
外窓と内窓で2回、音は減衰することになります。
つまり、それだけ外からの音が聞こえにくくなり、室内は静かになるのです。
これは室内からの音漏れに関しても有効です。
仮に窓の防音性が良く無いと室内の話し声が外に漏れ、プライバシーの問題になってしまいます。
しかし、二重窓にするならば防音性が上がるため、プライバシーの問題も起こりにくくなります。
断熱性も上がる
熱の伝わり方の1つに伝導があります。
これは固体の中の温度の伝わり方です。
例えば、長い鉄棒の端を温めるともう一方の端にまで温かさが伝わる現象がありますが、これは伝導の良い例と言えるでしょう。
さて、窓ガラスの場合の伝わり方は、伝導以外にも放射などもあるのですが、窓ガラスを伝導して来る物が多いです。
ですから、窓を二重にするとそれだけ熱が伝わりにくくなり、断熱性も上がるのです。
ですから、内窓を既存の窓に取り付けて二重にするならば、それだけ熱が伝わりにくくなり、断熱性もアップするのです。
ちなみに、昔の窓ガラスの場合には普通の板ガラスが使われていました。
そのため、窓ガラス部分が熱を伝えやすく、断熱性があまり良くなかった物です。
しかし、今の住宅ではペアガラスが普及しています。ペアガラスは二枚のガラスを中間に空気層を設けて合わせて断熱性をアップさせた物です。
また、最近では真空ガラスと呼ばれるガラスも出て来ました。
これは二枚のガラスの間に真空層を設けて、更に熱の出入りを抑えるガラスと言うことが出来ます。
…窓を二重にしても同等の効果が望めるのです。
防犯にも効果的
窃盗犯の侵入経路としては、以前は玄関と窓がメインでした。
玄関はピッキングなどで鍵を開けてドアを破り、窓の場合にはクレセント錠付近を破って錠を開ける…と言った手段が主な物でした。
そんな中で、ドア錠のメーカーの研究が実り、簡単には開けられない錠が開発されました。
そのため、窃盗犯は窓を侵入経路として選ぶ様になったのです。
さて、窃盗犯が使う窓を割る手段は、クレセント錠まわりを破る手段やバーナーで加熱して水で急冷させる方法があります。
ただし、これらの方法であっても窓を破るまでには、やはり時間が掛かってしまいます。
そして、あまりにも手間が掛かる場合には、窃盗犯は諦めてしまうのです。
ところで、窓を二重にすると、破らなければならない窓が増えるので、手間と時間が大幅に増えます。
その結果、窃盗犯は諦めやすくなり、敬遠する様にもなります。その結果、侵入犯罪から守れる様になり、防犯性がアップするのです。
内窓のデメリット
内窓について見て来ましたが、こうして見るとメリットばかりしか無い様にも思えて来ます。
しかし、二重窓にもやはりデメリットはあります。
それでは、どの様なデメリットがあるのでしょうか。
開け閉めが面倒
まず挙げられるのが、開け閉めが面倒な点です。
通常の窓は手間はほとんど要りません。
錠が掛かっている場合には確かに解錠の手間は必要です。
た、補助錠の付いている窓であれば手間は必要です。
しかし、二重窓の場合には、それらの解錠の手間に加えて内窓の開閉の手間が必要です。
この手間は、やはり面倒臭いです。
掃除に手間が掛かる
窓の掃除は意外に手間が掛かる物です。
もしかしたら窓ガラスを拭くだけで済む…と考えている人も居るかもしれませんが、実は違うのです。
レールの部分などにはゴミが溜まることもありますし、窓ガラスを固定するゴム部分にはカビが生えることもあります。
さて、それでは二重窓の場合はどうでしょうか。
二重窓は掃除が大変です。
単に窓が二重になるからだけでなく、外窓と内窓の間の部分の掃除が面倒で、デメリットと言えるのです。
まとめ
二重窓について紹介して来ました。
二重窓の便利な点からデメリットまで把握出来たことと思います。
二重窓は注目すべき建材ではありますが、デメリットも把握した上で無いと、「こんなはずでは無かったのに…」ということになります。メリットだけで無く、デメリットも理解した上で設置することが大切と言えるでしょう。