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家づくりの知識

定期借地権つきの不動産を購入する際のメリットとデメリット

マイホームの購入においては、取得コストが悩みのタネになる人は多いと思います。住宅取得の金額は数千万円にも及び、一般の人では即金で支払える金額では無いからです。そのため、ある人は少々不便な場所にしたり、狭い家に決めたりします。
さて、不動産広告を調べてみると、時折「定期借地権付き」という表現を見つけることが出来ます。この言葉、聞きなれない人も居ると思いますが、どの様な意味なのでしょうか。
そこで、ここでは定期借地権付き物件について焦点を当て、紹介したいと思います。

定期借地権とは

まず、定期借地権とは、どの様な意味なのかについて紹介します。

定期借地権とはどんな権利か

マイホームを建てるためには、当然ながら建てるために土地を入手しなければなりません。この土地取得、一般には「お金を支払って『自分の物』にする」ことになります。しかし、絶対に自分の物にする必要までは、実はありません。土地だけを所有者から借りて建てることも可能だからです。
借地権とは、まさにこの権利と言えます。
住宅建設のための土地を地主から借りるイメージになり、自分の所有物にはなりません。この点が所有権との違いと言えるでしょう。
尚、定期借地権とは、期限を決めて賃借する契約です。ですから、未来永劫借り続ける訳には行かず、いつかは返す時が来ます。

定期借地権と旧借地権

定期借地権に似た用語に「旧借地権」という言葉があります。少し、借地権についても触れてみます。
定期借地権は「借地借家法」という法律で規定されています。ただし、この法律は平成4年の法律であり、その前は「借地法」という法律がありました。借地法は平成4年の借地借家法のスタートで廃止されましたが、その権利…借地権は今でも残っています。尚、この借地権は「旧借地権」と呼ばれます。
それでは、定期借地権と旧法借地権の違いはどの様な点でしょうか。
大きな相違点は契約の更新が可能である点です。そのため、地主にお金を支払う以上、契約は更新され、土地は地主に還りません。ですから、悪く言うならば「一旦土地を貸してしまうと、土地は還らない」と言った状況にも陥る可能性があるのです。ただし、旧法借地権の場合には、期間の定めのない契約であれば、建物が腐朽した際には、権利が消失します。
しかし、定期借地権は期限そ決めて契約します。旧借地権とは違うのです。

定期借地権付き物件を購入するメリット

この様に見て行くと、物件を持つ上でも権利の確認が必要であることが分かったことと思います。自分の土地を買うつもりだったが、実は借り物であった…などの落とし穴と取られるかも知れません。確かに権利としては所有権の方に魅力を感じる人は多いことでしょう。しかし、定期借地権付き物件にも取得のメリットは、やはりあります。ではどの様なメリットがあるのでしょうか。

取得コストが抑えられる

定期借地権付き物件の一番の魅力は、取得コストが抑えられる点です。
冒頭にも挙げた通り、不動産の購入にあたって一番のネックになるのが、物件の取得代金である人は多いです。物件に対する妥協はそこで行われるのですが、金銭面の工夫もそこでは行われます。…住宅ローンが組まれるのです。
住宅ローンは月々の出費を抑える上で非常に効果的ではありますが、ローンの返済期間が非常に長く、35年に及ぶことも多々あります。

さて、この35年という期間をライフイベントに重ね合わせてみると、その期間がいかに長いかが実感出来ます。と言うのも、例えば20代後半くらいで結婚して住宅を購入した場合、35年を迎える頃には定年になっているケースも考えられるからです。確かに、今では65歳まで働けるので、期間的には大丈夫と思われるかも知れませんが、仮に住宅取得の時期が30代前半になるならば、70歳前くらいにローンが終わる計算になります。

このタイミングは今の労働スタイルから考えるならば、ローンを払い終わらない段階で職場を去ることになります。金融機関の抵当権が無くなる前にローンの支払いが苦しくなる…という事態も想定し得るのです。
しかし、定期借地権付きの物件であれば、取得コストが抑えられるので、ローンの期間を短くすることが可能です。その結果、経済的に余裕を持つことが可能となります。長い目で見ても、非常に嬉しいメリットと言えるでしょう。

契約期間を長くすることも可能

定期借地権の付いた土地は自分の物にはならず、最後には地主に還さなければなりません。そして、この部分に抵抗を覚える人も多いと思います。…せっかく何十年も掛けてローンを支払った物件を、あっさりと還さなければならない…このルールを面白く無いと思うケースが多く感じられることでしょう。

しかし。定期借地権の契約期間は非常に長いです。マイホームなどに適用される一般定期借地権の場合、契約期間が「50年以上」となっています。ですから、50年を超える期間で設定した場合には、定年の後、その家で悠々自適な生活を満喫することも、十分に可能です。
ちなみに、先に挙げた30歳前後で住宅取得をする場合、土地を還す時期は80歳を超える計算にもなります。

税金面で有利

マイホームを持つとローンの他にも様々なコストが発生します。設備が故障した場合には設備の修繕費用が発生しますし、日常のメンテナンスを怠りなくするならば、それなりの費用が発生します。ただ、住宅を持っていて発生する費用はそれだけではありません。…税金が発生するのです。

住宅を持っていると発生するのが固定資産税です。これは土地の所有者が納めることになっています。そのため、納税の義務を負うのは地主となっており、借主ではありません。ですから、定期借地権付き物件を購入するならば、所有権の物件よりも税制面でメリットが出るのです。
ちなみに、この税金の仕組みを実際の家計に当てはめて考えるならば、その効果の魅力が良く分かると思います。

具体例としては…不動産取得にローンを利用している場合、当然ながら毎月の支払が発生します。この負担は意外に大きく感じることも多いでしょう。
不動産の所有権を持っていると、その物件の固定資産税を支払わなくてはなりません。物件の価値にもよりますが、家庭の経済的負担を考えるならば、税金は痛手です。しかし、この義務を免除されるならば、家計的にも助かります。
定期借地権付き物件は、納税の義務を負いません。そのため、この経済的痛手を負うことも無くなるのです。

定期借地権付き物件を購入するデメリット

この様に、定期借地権付きの不動産は大きな魅力を持っています。その経済的メリットは非常に大きく、それを決め手として契約に踏み切る人も多いと思います。
しかし、定期借地権付きの物件はメリットしか無いのか、と言うと、決してそうではありません。デメリットもあるのです。
では、定期借地権付きの不動産には、どの様なデメリットがあるのでしょうか。

土地を返さなければならない

土地を所有権が付いた状態で購入するならば、文字通りその土地を所有することになりますので、売却をしなければ、物件を持ち続けることが可能です。そして、この資産は次の世代に受け継がれ、ある物は居住用として、またある物は投資用物件として使われて行くことでしょう。
ところで、定期借地権付きの物件は、この様に物件を持ち続けることは出来ません。時期が来たら物件を還さなければならないのです。この点が、定期借地権付き物件のデメリットと言えるでしょう。

ですから、せっかく築いた財産を子供に遺すことは出来なくなります。借主が死亡した場合でも、相続は権利だけに限定されてしまい、子供は住み続けることは出来ても、還さなければならない時がいずれは来るのです。
確かに定期借地権付き物件は50年以上に契約期間が設定されるので、所有権同然と思えるかも知れませんが、子供にとってはそうではありません。かえって「人生設計が狂う」と思う人も居るかもしれません。

契約更新が無い

一般の不動産の賃借契約であれば、契約の更新は可能です。例えば、マンションを借りる場合などは多くの場合、2年が契約期間とされます。そして、2年が経つと契約は更新され、借主は住み続けることが出来るのです。
ちなみに、賃借契約の場合には、貸主には解約の自由はありません。解約には正当な理由が必要なのです。…これらは借地借家法によって定められています。

ところで、定期借地権に関しても借地借家法で定められていますが、この権利は賃借契約とは違います。特に違うのは「更新期間が無い」点です。そのため、契約期間の終わりが来たら、契約は終わることになり、物件は返還されます。
この件に関しても、契約期間が50年以上だからと安心するかも知れませんが、子供世帯が「人生設計が狂う」と思うかも知れません。やはりデメリットと言えます。

融資を受ける上で不利になる

一般の所有権付きの物件であれば、審査はあるものの、基本的には銀行はローンを利用させてくれます。銀行もローンの利子で収益を得ているため、資金は貸したがるのです。そして、仮にローンの支払いが滞ったとしても、物件そのものに抵当権を設定するので、物件を取り上げて換金することが可能です。ですから、銀行にとっても比較的リスクの少ない契約と言えるのです。

しかし、定期借地権付きの物件は、その様に行くとは限りません。むしろ銀行は難色を示す場合が多いです。
これにはいくつかの理由があるのですが、最も大きい理由としては担保価値が所有権の物よりも低い…という点があるからです。
また、借主が土地代を支払わなくなった場合には、状況によっては契約解除のリスクが出て来ます。
この様に、定期借地権付きの物件には、銀行にとってのリスクもあるのです。だからローンの審査が厳しくなるのです。

まとめ

定期借地権付きの物件について、権利のアウトラインからはじめて、メリットとデメリットについて見て来ました。その用語の裏側…安く見える不動産広告の裏側には、どの様な契約が発生しているか、イメージが掴めたことと思います。
定期借地権付きの物件にはリスクがあるので、二の足を踏む人も多いことでしょう。しかし、数千万円の不動産の一部でも安くなるのであれば、より良い生活が可能となる…という判断も十分にアリです。
ただし、次の世代にも影響があるので、利用にあたっては、十分に検討することが必要となるでしょう。