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家づくりの知識

究極の二世帯住宅 サザエさんの間取りに学ぶ中庭と茶の間のある生活

「間取りをどうするか」という課題は、家造りの上でトップクラスの難しい問題です。
と言うのも、間取りは生活動線にダイレクトに関わって来るため、「家の使い勝手」が決まるからです。
しかも、それが二世帯住宅になると、更に難しいことでしょう。

ところで、二世帯住宅を考える前に大切なのが「二世帯での生活をどうするか」では無いでしょうか。
と言うのも、家族を家に合わせるのでは無く、家を家族に合わせるべきだからです。

しかし、いざ二世帯での生活…と考えると、まわりに参考例も無いため難しいかも知れません。
ただ、それをテレビ番組の中で探すことは可能です。

ただし、それをゴールデンタイムのドラマの、必ずしも幸せとは言えない人間模様の中で探すことは望ましくないとも思われます。
むしろ、幸せに暮らしている家族に探すべきです。

そこで、ここでは国民的なアニメの「サザエさん」の暮らす家を参考に、二世帯住宅を考えてみたいと思います。

「家族間の距離」から見た二世帯住宅の特徴

まずは二世帯住宅にはどの様な物があるかについて、「家族間の距離」の観点から、復習したいと思います。
と言うのも、二世帯住宅には「完全分離型」「部分共有型」「完全同居型」の3つの種類あり、それぞれによってライフスタイルが異なるからです。

完全分離型

完全分離型は、一軒の住宅の中に二世帯分の家を造るタイプの家で、玄関からリビング、キッチンや浴室などまで分けて造ります。
二世帯間は壁で仕切り、基本的には双方の行き来はほとんどありません。双方が「完全に別の生活を送る」ことが出来る点が、大きな特徴と言えます。

さて、これを「二世帯間の距離」の観点から見ると、この家での生活は「一番距離が遠い」と言うことが出来ます。完全分離型は、玄関から食事、そして就寝に至るまでが、それぞれが独立するからです。

そして、更に言うならば、この家での生活は「お互いの顔を見るのは数日に一回」にもなり得ます。生活時間帯までが違えば、顔を合わせるのは門のまわりだけともなり得るのです。

部分共有型

部分共有型は、設備を共有しながら、基本的な生活空間を別にする二世帯住宅です。
間取りとしては、玄関を二世帯間で共有し、リビングなどの生活空間を二世帯で分けます。

そのため、二世帯間で「適度な距離」を保つことが可能です。
ですから、基本的な生活を分けながら、困った時などに助け合うことが出来る点が特徴の二世帯住宅と言えます。

ただ、基本的な生活は分かれていますので、食事をみんなで取るサザエさんの家と比較するならば、世帯間の距離は遠いです。

完全同居型

完全同居型の二世帯住宅は、住宅のほとんどの部分を二世帯で共有して使います。
玄関、キッチン、浴室、そしてリビングも共有スペースとなり、独立しているのは寝室程度です。
そのため、二世帯間の距離は非常に近くなります。

この住宅のタイプこそが「サザエさん」の家の造りです。
アニメを見れば分かりますが、親世帯と子世帯の距離が非常に近く、夕食も一緒に取る光景も良く見られます。

昭和の家の「茶の間」の特徴

サザエさんが描かれたのは結構古く、昭和の中盤の話でした。
この頃の住宅は平屋が多く、街には空き地もありました。
子供たちが空き地で野球をしているシーンを見かけることがありますが、今の街並みとずいぶん違っていることが分かります。

さて、サザエさんのシーンで、家族みんなが夕食を取っている部屋、これを「茶の間」と呼びます。今の住宅のリビングに似ていますが、リビングとは少し違う部分もあります。
そこで、ここでは「茶の間」の特徴を紹介します。

畳敷きの部屋

昔の日本家屋は基本的に畳敷きの部屋を組み合わせて構成しています。
茶の間は家の中心的な部屋となり、家族全員が集まる居場所となります。

畳敷きの和室は、8畳間・6畳間・4畳半の構成が多いのですが、サザエさんの夕食のシーンを見ると、大家族が集まる部屋となるので、8畳間くらいか…とも思われます。
尚、和室の広さは東日本と西日本で異なり、西日本の部屋の方が少し広いです。

部屋の中央に「ちゃぶ台」がある

「茶の間」は一家団欒の場所です。
ですから、家族みんなが集まり、食事を取り、そしてお茶を楽しむための大切なアイテムがあります。…それが「ちゃぶ台」です。
家族はちゃぶ台のまわりに集まり、共に食事を取り、そしてテレビを見て、共に笑います。
まさに「家族の団欒」の時間と言えるでしょう。

テレビが重要アイテム

サザエさんが始まったのは昭和の時代です。
当然ながらネットなどはありませんでした。
電話が鳴るシーンを時折見かけますが、スマートフォンではありません。

さて、その時代まで遡ると、庶民の娯楽はテレビだったと言うことが出来ます。
今では考えにくいかも知れませんが、家庭によってはテレビはカラーでは無く、モノクロでした。

サザエさんに見る「中庭」と「茶の間」のある生活

さて、「茶の間」がどういう部屋であるかのイメージは出来たと思います。
ところで、この様な昭和の建築物では、どの様な生活なのでしょうか。茶の間に加え、サザエさん宅にあるもう1つの重要要素、「中庭」を含めて考えてみたいと思います。

食事を一緒に取る生活

サザエさんのを見てみると、波平さんとマスオさんが家族と一緒に夕食を取っているのが分かります。
アニメの中では、この場面でカツオくんが叱られたりするものですが、少し考えていると、現代の状況とずいぶん違うことに気が付きます。
と言うのも、例えば波平さんの深夜帰宅は誰かと呑んで帰った時です。

しかし、今のビジネスマンの場合には、残業で午前様というケースも少なくありません。この点が、サザエさんと現代ビジネスマンの大きな違いとも言うことが出来ます。

テレビを一緒に見る生活

サザエさんの茶の間にはテレビがあります。しかも、家族で見ています。
これは意外と現代とは違うかも知れません。
と言うのも、今ではリビングに居ながら、テレビを着けながらでもスマートフォンを見ている…というケースがあるからです。

サザエさんの時代は黒電話の時代で、スマホの無い時代です。生活スタイルが、やはり違います。
そして、娯楽はテレビです。テレビはネットの無い時代、テレビは家族で見る物でした。

子供との時間を大切にする生活

サザエさんを見ていると、子供たちが中庭で遊んでいるシーンを見つけることが出来ます。
中庭は野球の様に広い場所が必要な遊びは出来ませんが、小さい子供を遊ばせるには向いています。

また、そこでは「子供との時間を大切にする場面」も見えて来ます。今の日常では見られなくなったかも知れませんが、そのシーンを通して、家族の暖かさを感じた人もいたことと思います。

一枚上手の二世帯住宅造り

さて、サザエさんのアニメや、古い住宅の家屋の状況を見て、二世帯間が同居する住宅も面白いことも分かったことと思います。
ただ、テレビの世界は現実世界と違います。

二世帯住宅をより良い物とするためには、やはり工夫が必要なのです。
そこで、ここでは二世帯住宅をより良い物にする工夫を紹介します。

断熱性のアップ

冬場などは浴室も寒くなり、脱衣所などでは震えなければなりません。
冬の浴室は他の部屋と比較すると、気温が低い場合が多いからです。
そして、この気温の差は身体にも良くは無く、時には深刻な健康被害の発生にも繫がります。

しかし、住宅そのものの断熱性を向上させると、気温の差が発生しにくくなり、住環境が健康的になります。
断熱性のアップの方法としては、壁に設置してある断熱材の交換の方法と、建物の外側を断熱材で覆ってしまう方法があります。いずれの方法も住環境アップの上で効果的なので、より良い家造りが可能です。

浴室のユニットバス化

サザエさんを見ていると、時々入浴のシーンを見ることが出来ますが、その中の様子を見ていると、浴室が在来工法で造られていることが分かります。

ところで、今の住宅の浴室はユニットバスが増えていて、しかも在来工法の物に比べて高性能です。
例えば、サザエさんの家の浴室には手すりは見られませんが、今のユニットバスは手すりが標準的に付いています。

また、今のユニットバスには浴槽の保温性を高めた物や、滑りにくい床を採用した物もあります。
この様に、今のユニットバスは性能が高いです。
ですから、良い二世帯住宅を造るためには、浴室をユニットバスにする方がおすすめです。

浴室・トイレの配置

二世帯住宅を造る場合には、間取りについても気を付けるべきです。
特に、設備を共用するのであれば、特に浴室やトイレの配置には気を付けたいものです。

さて、浴室やトイレは他の部屋に比べて移動の際にも寒さを感じやすいです。
廊下が長い場合などは、その長さに比例して寒くなってしまいます。
しかし、浴室やトイレを寝室に近く設けるのであれば、身体を冷やすことも少なくなります。
ですから、浴室やトイレは親世帯の寝室の近くに配置すべきです。

バリアフリー要素を取り入れる

住宅のバリアフリー化が積極的に行われる様になったのは近年のことで、サザエさんの時代には、あまりバリアフリーは論じられていなかったと思います。

また、波平さんも定年を迎えてはいなかったので、その当時の家としては、バリアフリーもあまり必要が無かったのかも知れません。

しかし、今の二世帯住宅にはバリアフリー要素が非常に大切になります。段差の解消やスロープの設置など、親世帯の生活への配慮が非常に大切になるのです。

まとめ

サザエさんの家を通して、二世帯住宅の1つの形態の良さが分かったことと思います。
また、「茶の間」の特徴や過ごし方、「中庭」では子供が遊ぶ様子などについて取り上げました。昔ながらの暮らし方も分かったことと思います。

確かに、これらは昭和の時代の物語ではあるため、令和に生きる私たちにはマッチしない部分もあるかも知れません。

しかし、家族の在り方などを考えると、1つの有力な答えを与えてくれることは間違いなさそうです。

二世帯住宅を検討する場合には、単なる家の構造だけでなく、「ちゃぶ台」を取り入れる…なども考えるのも面白いかも知れません。1つの面白いコンセプトとなることでしょう。