住宅のリフォームのチラシなどを見ていると、水まわりなどのリフォームの記事と一緒に「外壁塗装」というリフォームの記載を見つけることが出来ると思います。
このリフォームは、その名の通り住宅の外壁や屋根まわりの再塗装を指しますが、もしかしたらあまり重要でない印象を持たれるかも知れません。
しかし、外壁塗装のリフォームは非常に重要なのです。
そこで、この記事では「仮に外壁塗装をせずに放置すると、どういう事態になり得るか」について、そして再塗装の重要性について考えて行きたいと思います。
再塗装をしないとどうなるか
「外壁塗装」と聞くと、もしかしたら「家のペンキの塗り替え」くらいにしか取られないかも知れません。
確かに塗装は「塗り替え」と言うことも出来るのですが、単にペンキを後から塗る…程度のニュアンスなのでしょうか。
そこで、ここでは、仮に住宅の外壁を塗り替えずに放置した場合に、どの様な事態になるかについて考えてみましょう。
外観の老朽化
言うまでも無いことですが、再塗装をしないと外観の老朽化が目立って来ます。
ただし、これは単に「汚れ」だけの話ではありません。
「金属部分のサビ」なども含みます。
これらは建物の外観を汚してしまい、印象を悪くしてしまいます。
当然ながら、その様な状態になってしまうと、住み心地も悪くなります。
また、仮に人に貸したり売却する場合には、価値を下げてしまい、安い値段しか付かなくなります。
水の侵入
次に考えられるのが「水の侵入」です。
仮に塗装のメンテナンスをしないで放置しておくと、塗装の表面が劣化してしまい、機能そのものが落ちてしまいます。
そうすると水などにも弱くなってしまい、壁の内部などに水の侵入を許してしまいます。
尚、窯業系サイディングの例で考えれば、表面の塗装がダメになると、サイディングの中に水を浸透させてしまいます。
そうすると、サイディングが反ってしまう現象なども発生し得るのです。
部材の腐食
住宅の外壁材の裏側には部材が走っています。
これは外壁材を固定している部材で、それほどは太くありません。
そのため、仮に水で濡れてしまった場合など、腐食するリスクが意外に高いです。
さて、塗装表面が劣化して、水の侵入を許した場合、ケースにもよりますが、外壁材の裏側の部材にも達してしまいます。
そして、その部分が乾燥しない場合には、部材の腐食を招いてしまいます。
当然ながら、部材が腐ってしまうと強度が落ちてしまいます。
建物の破損
部材が腐食すると水の侵入経路を作ってしまい、そこから水が更に入ってしまいます。水の侵入は、最初はわずかに思えるかも知れません。
しかしそれは腐食の進行速度を速める結果にもなり得ます。
そうなると、部材の強度低下のスピードも速くなり、部材も弱くなってしまいます。
また、そういった現象が同時多発的に発生すると、部材強度どころのレベルでは無く、建物そのものの強度までも落ちてしまいます。
そうすると、建物の破損リスクが高くなってしまうのです。
建物の破損は、もしかしたら、すぐには発生しないかもしれません。
しかし、台風や春一番などの突風が吹いた時、屋根が剥がされたりする事態にも陥るのです。
住宅の置かれる環境を再確認
ここで、住宅の置かれる環境について復習したいと思います。
「自然は過酷」であることは分かるとは思いますが、改めて挙げてみると、それがどれだけ大変なのかが分かると思います。
日射
まずは日射を取り上げてみましょう。
日射の過酷さは容易に想像が出来ると思います。
特に夏場の気温上昇は非常に過酷で、時として人が倒れるほどです。当然、その過酷さを住宅も受けてます。
そして、屋外の塗装部が大きなダメージを受けてしまいます。
しかし、日射の厳しさはそれだけではありません。
日射には紫外線も含まれていますが、その紫外線が塗装に更に大きなダメージを与えてしまうのです。
温度変化
次に温度変化について考えてみます。
夏場の温度上昇の過酷さは前に挙げた通りですが、その一方で冬場は氷点下にまで気温が下がります。
そのため、住宅は非常に大きな温度変化に晒されることになります。これも住宅にとっては厳しい環境と言うことが出来ます。
特に塗装部分はそのような環境に晒されるので、劣化の観点から考えても、条件的に非常に厳しいです。
凍害
外壁材の表面などは、温度変化や日射などで細かいヒビが入ることがあります。
それのヒビ自体は、もしかしたら軽微な物に思えるかもしれませんが、そこに水が浸入し、更に侵入した水が凍結してしまうと、ダメージを大きくしてしまうことにも繋がります。
と言うのも、水は凍結すると体積が膨張してしまい、表面に入っていたヒビを、更に大きくしてしまうからです。
粉じん
粉じんも外壁に大きなダメージを与えます。
粉じんは時として好ましくない化学変化を引き起こしてしまうからです。
外壁塗装は確かに化学的な安置性は高いのですが、それでも影響は受けてしまいます。
特に温度上昇や雨水の侵入によって、化学的な条件は悪化してしまのです。
排気ガス
排気ガスはガソリンなどが燃えて発生しますが、成分を見てみると、意外に塗装に悪影響を与える物質が含まれています。
例えば、窒素酸化物などが排気ガスには含まれていますが、この物質は化学的に悪さをしてしまい、塗装部分の状態を悪化させてしまいます。
塩害
塩は化学変化を引き起こす物質と言っても過言ではありません。
住宅の外壁も良くない影響を受け、傷んでしまいます。
外壁材も表面に塩が付着すると、良くない化学変化を引き起こしてしまいます。そのため、老朽化が早まるのです。
塗料の役割を復習
ここで塗料の役割について復習したいと思います。
塗料の成分は「樹脂」「顔料」「添加剤」がメインです。
それぞれが作用して、塗膜が形成されます。
それでは、塗膜はどのような役割を担うのでしょうか。
美観保護
塗装の目的の1つは美観保護にあります。
建物の美観は快適な生活に非常に大切です。
住宅が美しいか否かで、住み心地も変わって来るからです。
また、先にも挙げた通り、仮に家をほかの人に貸したり、売却する場合にも、外観が美しいと有利です。
良い外観は家賃の相場を上げたり、売却額のアップにも有利です。
表面保護
塗装の形成する塗膜は非常に薄いです。
しかし、表面を保護を保護します。
外壁材の表面には水が掛かり、しかも日射なども襲い掛かります。
また、温度変化なども厳しいです。
しかし、塗膜は水の侵入を防ぎます。
そのため、外壁材などの表面を、屋外の過酷な環境から守るのです。
再塗装は耐用年数延長に繋がる
ここで、再塗装と建物の耐用年数ついて考えてみましょう。
建物の再塗装をせず、そのまま放置しておくと外壁の表面が傷んでしまい、水の侵入を許してしまうのは、前述の通りです。
そのため、塗装には機能の保持が必要となります。
つまり、塗膜の持っていた表面保護の機能を復活させる必要があるのです。
建物の再塗装は、その様な塗膜の機能の復活に有用です。
再塗装をしてやれば、新たな塗膜が表面を保護するので、外壁材の耐用年数が長くなります。
その結果、建物への水の侵入を防ぐことが出来る様にもなります。
そうすると、壁の内部への水の侵入を防ぐことが出来て、住宅の構造材を腐食から守ることが可能となり、結果的に住宅の耐用年数を長くすることが可能となるのです。
塗料はこのような試験をされる
ここで、塗料の試験について紹介したいと思います。
塗料は作りっぱなしでは無く、様々な品質チェックを経て発売されます。
品質試験は非常に多岐に渡ります。形成した塗膜の強度はどのくらいか…または仮に傷が付いた場合には、どれくらいの悪影響を受けるか…などです。
そこで、ここでは塗装の環境試験のメインとなる物について、いくつか紹介したいと思います。
屋外暴露試験
屋外暴露試験は、塗料を塗った試験体を屋外に晒して変化の様子を確認する試験です。
屋外環境に実際に晒せるため、非常に再現性の高い試験と言うことが出来ます。
屋外暴露試験は、日本の気候の過酷な場所で行われることが多いです。
と言うのも、日本には北海道の様な非常に寒い地域がある一方で、沖縄の様な気温の高い地域もあるからです。
そのため、屋外暴露試験は、日本の複数個所で行われる場合もあります。
例えば、沖縄と九州で、同時進行的に行われ、塗膜の状況変化を観察されます。
塩水噴霧試験
塩水噴霧試験は、主に金属に施した塗装の評価について行われる試験です。
塩水を意図的に吹きかけ、金属部分の腐食の状況を見ます。
塩水噴霧試験は、一定の濃度の中性の塩水を、試験体に霧状に噴霧します。
その結果、試験体に発生するヒビなどにも塩を入れることが出来て、塩害をシミュレート出来る様になります。
ちなみに、外壁材の中にはクギなどで固定している物もあるので、その部分の塩害による影響も見ることが出来る様になります。
促進対候性試験
先にも取り上げた様に、日光には紫外線が含まれています。
そして、塗膜は紫外線によって劣化します。
促進対候性試験は、人為的に強い紫外線を照射して、試験体の状況を確認します。
試験は特殊な試験装置を使い、数百時間単位で行います。
屋外環境での紫外線の再現は、実は非常に難しいです。
しかし、促進対候性試験を行えば、どれくらいの時間大丈夫であるかについて、確認することが可能です。
まとめ
住宅の置かれる環境と、それによって受けるダメージについて考えて来ました。
外壁の再塗装が非常に重要であることが分かったことと思います。
住宅の塗装は「後で考えればいい…」と、ついつい検討を先送りにしがちと思います。
しかし、建物がどの様に傷むかを考えると、先送りに出来ない問題と言えます。
住宅には定期的な再塗装が、やはり必要です。先延ばしにせず、定期的にメンテナンスをする様にしましょう。