住宅には様々な性能があり、どれもが気持ち良い生活のために必要です。
冬に温かく過ごすためには、住宅には断熱性が要求されますし、安心して寝るためには防犯性が求められます。
今回取り上げる防音性も、その中の1つで、快適な生活に欠かせない物です。
ところで、今の住宅と中古住宅を比べると、中古住宅の方が性能的に劣っているケースが見られます。
これは、住宅を構成する建材の研究開発が進み、性能的に高くなっている背景があるからです。
そのため、中古住宅で今の住宅と同じ水準の快適性を実現させるためには、やはりリフォームするのが望ましいです。
それでは、防音性を上げるためには、どの様にすれば良いのでしょうか。
ここでは中古住宅の防音リフォームについて取り上げ、その必要性からリフォームの方法まで紹介したいと思います。
防音性の必要性
ここでは、住宅の防音性がなぜ必要かについて取り上げます。防音と聞くと「静かになる」というイメージが出来るでしょうが、恐らく漠然とした物と思います。
しかし、「防音の目的」を具体的に考えると、防音リフォームの必要性も具体的に分かって来ます。
この記事を読んでいる方は、
・実際に隣家から苦情が来た方
・隣の音が聞こえないようにしたい方
・こちらの音を外に漏らさないようにしたい方
・道路を走る車(トラック)の音がうるさくて眠れない方
などさまざまだと思います。
静かな生活のために
屋外には様々な騒音があふれています。
車や電車の騒音、工事現場の騒音、あるいは人の話し声も騒音となるかも知れません。
室内にいる時にその様な騒音が聞こえると、うるさくて神経に触ります。また、夜間や早朝であれば、安眠妨害にもなります。
住宅の防音性は、その様な騒音の居室内への侵入を防ぎます。
また、古い住宅の防音性に難のある住宅であっても、防音リフォームにより静かで快適な生活をすることが可能です。
音の問題で隣家に迷惑を掛けないために
例えば、音楽を趣味にしている人は多いと思います。
音楽の鑑賞にしろ楽器の演奏にしろ、大きな音はどうしても出てしまいます。
当然ながら、その様な大きな音を出すと、隣家には迷惑を掛けてしまいます。
これでは良くありません。
住宅の防音リフォームは、その様な場合に有効な対策です。
防音リフォームで、家の中から出る音を外に漏れない様にすれば、隣家に迷惑を掛けずに安心して音楽を楽しむことが出来る様になるからです。
プライバシーを守るために
プライバシーの保護も日常生活には欠かせません。
個人的な会話が他の人に聞かれたら良くありませんし、場合によってはそれが個人情報の漏洩にも繋がり得るからです。
住宅の防音性の確保は、プライバシーの保護にも必要です。
住宅の防音性が確保されていれば、家の中の話し声や電話の通話などの音も外に漏れず、プライバシーが守られます。そのためにも、防音リフォームは必要です。
音について復習する
防音リフォームの具体的手段を取り上げる前に、「音」について復習したいと思います。
音…と言うと「空気を伝わる振動」といったイメージが出て来ると思いますが、実はそれだけではありません。固体を伝わる音もあるのです。
空気音
空気音は先に挙げた「空気を伝わる振動」です。
例えば、会話の際には1人が声を出すと、もう1人の耳にその音が届きます。
これは声が空気の振動として、もう1人の耳まで伝わるからです。
尚、空気音の例としては、人の声の他にも、自動車や飛行機などの騒音が挙げられます。
固体音
音は空気の振動だけではありません。
固体を伝わる音もあります。
例えば、2階建ての住宅などで、上の階で人が歩くと下の階に響くことがあります。
これは上の階の床で発生した振動が、家の天井や壁などの固体部分を伝わって下の階に届く現象です。
固体音の例としては、人の歩く音の他にも、マンションなどで響く水の音なども挙げられます。
ちなみに、音楽演奏や鑑賞の際には空気音と固体音の両方が発生します。
ピアノの音であれば、演奏する曲が空気音として聴衆に伝わり、固体音として下の階などに伝わります。
また、オーディオのスピーカーであれば、音楽そのものは耳に空気音として伝わりますが、重低音は下の階や隣の部屋に固体音として響きます。
防音の種類
「防音」と単に言っても、方法は1つではありません。
いくつかの方法があるのです。
ここでは、防音の代表的な方法について紹介します。
吸音
吸音は空気音に有効な防音です。
音がある素材にぶつかる際に、エネルギーの一部が熱に変換されて、ぶつかった音そのものが小さくなる現象と言えます。
例えば、音は何かにぶつかった場合に反射します。
反射した際にぶつかった物と摩擦が発生して熱となります。
ところで、この反射の回数が多くなると、その回数分だけ摩擦が発生します。
そして、そのぶつかった回数、つまり摩擦の回数分だけ音が小さくなるのです。
この性質を上手く利用した素材が吸音材です。
吸音材は多くが多孔質素材で、音が素材の中で乱反射する様に出来ています。
例としてはウレタンやメラミン製のスポンジ素材の物があり、音が乱反射しやすい様に、表面がピラミッド形になっている物があります。
遮音
遮音は文字通り「音を遮る効果」と言えます。対象は空気音です。
空気音は空気中を振動として伝わりますが、伝わっている空気を板などで遮ると、その時点で減衰して音が小さくなります。
例えば、隣の部屋がうるさい場合に、部屋のドアを閉めると静かになります。これはドアで音の伝わる空気を遮るため、音が小さくなるのです。
住宅の遮音は、ドアや窓サッシなどが良い例と言えるでしょう。
尚、窓を二重窓とすると、遮音の効果が大きくなり、防音性が高くなります。
防振
防振は固定音の対策です。
固定音は、音の発生源から建物の壁などを伝わる振動と言うことが出来ますが、この振動は空気音とは減衰の状態が違い、固体の中を遠くまで伝わります。
しかし、固体音は伝わる経路に振動を伝えにくい素材を置けば、伝搬を小さくすることが可能です。
防振は防振材料を振動の伝わる経路に置き、振動の伝搬を小さくする方法です。
尚、防振材料としては、ゴムなどが多く使われます。
制振
制振は振動の発生そのものを抑えることで音を小さくする技術です。
代表例としては、振動源となる部分にアスファルトシート材などを貼って、振動そのものを抑制する方法があります。
音は振動源で発生しますが、シート材にて熱エネルギーに変換され、音そのものが小さくなり、静かになるのです。
この技術の応用例としては、洗濯機やエアコン室外機の騒音対策などが挙げられます。
防音リフォームとは
初めに申し上げておきますが、完璧な防音は残念ながらありません。
少しでも気にならなくする、人間の耳では判断しにくくする方法です。
前述の様に、中古住宅は品質が高いのですが、防音性能が十分にあるとは限りません。
そのため、近隣からの騒音に悩むことにもなり得ます。
また、楽器演奏や音楽鑑賞を楽しもうとする場合、近隣に迷惑を掛ける事態も考えられます。
その様な状態を改善させるためには、やはり防音リフォームがおすすめです。
それでは、防音リフォームとはどの様なリフォームになるのでしょうか。
屋外の騒音の場合
屋外の騒音は空気音として伝わって来ます。
車の騒音も工事現場の騒音も、空気音として屋内に伝わって来るのです。そして、音の侵入経路としては、壁や窓となります。
そのため、壁や窓のリフォームが有効です。
壁のリフォームとしては、壁に設置する断熱材を変えることで、防音効果を持たせることが出来ます。
例えばグラスウールなどは吸音効果を狙うことが可能です。
ただし、グラスウールの場合、施工の状態が良く無いと隙間を生じてしまい、防音性能が出ないこともあるので、施工の際には注意が必要になります。
次に窓ですが、古い住宅の場合には、窓ガラスが古い仕様の物のこともあり、十分な防音性が狙えないことがあります。
しかし、窓ガラスを防音性の高い物に換えたり、二重窓にすれば防音性のアップを狙うことが出来ます。
その他にも、気密性を上げることが防音に繋がります。
と言うのも、音は空気を伝わりますが、気密性が良く無い場合には、その隙間の部分が音漏れの経路となるからです。
その場合にはサッシの交換も含めて検討した方が良い場合もあります。
生活音の場合
生活音の伝わりを考えてみると、ほとんどが固定音であることに気が付きます。
上の階で使う水の音であったり、物を床に落とした音だったりします。
そのため、固定音対策がメインとなります。
住宅での固定音対策は、主に防振で対応します。
具体的には、上の階の床の床材の下に防振材を敷き、床の直接の打音の伝わりを軽減させます。
また、二重床にするのも効果的です。
床の支持脚部分に防振材を使えば、より一層効果的な防音床を作ることが可能です。
尚、上の階の話声などが聞こえて来る場合は、空気音として伝わって来るので、吸音材の設置が効果的です。
吸音材を貼り付けは比較的容易に付けられるので、短い工期で仕上げることが可能です。
楽器演奏・音楽鑑賞用
ここで楽器演奏や音楽鑑賞をする場合を考えてみましょう。
楽器演奏には空気音と固定音の両方が伝わります。
例えばギターなどの音は空気音として伝わりますし、ベースやドラムなどの場合は固定音も交じって響きます。
また、音楽鑑賞用の場合も同様です。
音楽鑑賞を趣味としている人は、大型のスピーカーを使う人もいるため、大きな空気音と固定音が発生します。
それでは、どの様な対策を打つべきでしょうか。
これらのケースの場合は防音室を造ることで対応します。
防音室は専門の業者があるので、その様な業者と相談すると良いでしょう。
中古住宅の防音リフォームの方法
防音は注文住宅を新築で作る場合には、4方向を囲むことができるので、自由に作りやすいかも知れません。
しかし、その場合は窓のない部屋になってしまうでしょう。
また、かなりの費用が掛かってしまいます。
中古住宅をリフォームして対応するならば、2方向、又は3方向を囲むことになります。
その為、材料費が減らせるわけですから、コストを抑えた家づくりが可能となります。
尚、防音リフォームは家をスケルトン化すれば非常に大掛かりな変更が可能です。
リビングの大きさにもよりますが、この1方向だけで概算で50万円~70万円はかかります。
【防音に使用する商品】
・吸音ウール/DAIKEN GB1801-5E
・遮音パネル/DAIKEN GB0104
防音フローリング
近年、マンションの床のリフォームではLL45を使用するようにと指定されております。
LL-45以下をおすすめする理由
JAFMAではLL-45以下をおすすめします。
マンションで特に注意しておかなければならない軽量床衝撃音遮断性能(LL)について、JAFMA(ジャフマ)・日本複合・防音床材工業会では、LL-55以下を防音床材とし、その中でもLL-45以下が望ましいと考えています。
当工業会のデータでは、すでに出荷量の90%以上がLL-45以下となっており、このクラスが主流であることを裏付けています。
まとめ
住宅の防音について見て来ましたが、防音の仕組みや具体例などが分かったことと思います。
また、中古住宅であっても隣家の音、声が気にならなくなる程度であれば十分に可能です。
しかしながら、空気の振動まで遮断し、【無音】にするとなると大工事になりますのでご注意ください。防音の必要性を感じた場合には相談することをおすすめします。