住宅を購入した後で、「隣の土地が自分の物だったら…」と考えたことのある人も多いかと思います。実際、マイホームを購入した後であっても、自宅の狭さなどに不便を感じ、増築などの必要性を感じるケースもあることでしょう。
それでは隣の土地は簡単に手に入れることは可能なのでしょうか。実は隣の土地は普通の不動産の様に「カネを出せば買える物」ではありません。注意すべき点などが、やはりあるのです。
そこで、ここでは隣地の購入に焦点を当て、「隣地購入のメリット」から「隣地購入の方法」、そして「やるべきでは無いこと」などについて紹介したいと思います。
まずは隣地を買うことのメリットについて説明します。隣地の購入は「借金をしてでも買え」と言う人もいるくらいですが、改めてメリットについて振り返るならば、なぜ「借金をしても…」と言ったのかが分かると思います。
増築が可能となる
まず挙げられるのが増築が可能となる点です。土地には建ぺい率と容積率が定まっているため、建てられる建物の限界が決まっています。そのため、建ぺい率や容積率ギリギリの建物である場合には増築が出来ないのです。
しかし、隣地の購入に成功すれば土地そのものが広くなるため、増築が可能となります。
ちなみに、土地が広がれば床面積をそのままにして平屋への改築なども可能となります。平屋の良い点は階段の無い点ですが、仮に老後を考えてバリアフリーを考えるならば2階建てよりもベターです。
庭として使える
次に挙げられるのが庭として使える点です。特に子供の遊び場の必要を感じた場合や、ガーデニングを楽しみたい場合などには、広い土地が必要になります。その場合に隣地を入手すれば、自宅の庭が広がるので、それらの課題は解消されるのです。
尚、庭を広げるとウッドデッキの設置なども可能となり、快適なユーティリティスペースを作ることも出来ます。
資産価値が上がる場合がある
土地の価格は駅からの距離や接道などの条件によっても決まりますが、形状によっても値段が違って来ます。つまり、台形の土地や旗地などの場合は値段を下げてしまうのです。
しかし、隣地を購入することによって長方形の様な成形地となるならば価格を上げ、資産価値の向上に繋がることもあります。
尚、土地の形が整って価値が上がることは、土地を売却する上でも有利となります。成形地の方が価値が高くなり、取引額の向上も見込めるからです。
相続税対策に繋がることがある
相続税は現金や所有している株式、更には趣味で持っている骨董品や美術品にまで掛かって来る税金です。しかも相続税は累進課税となっており、持っている資産の価値が高ければ高いほど税率が上がり、税額もそれだけ高くなってしまいます。
しかし、資産の評価を下げるならば税率もそれだけ小さくなり、節税へと繋がります。
ところで、資産の価値は持っている資産の種類によって異なり、不動産で持っていると評価も低くなります。そのため掛かって来る相続税の税率も低くなり、税額も合わせて抑えられるのです。
しかも隣地を購入する場合ならば、従来持っていた土地活用によるメリットに追加される利点なので、非常に条件的に良くなるとも言えるでしょう。
隣地を買う心構え
次に隣地を買う心構えについて説明します。隣の人は土地を売ろうと考えているとは限らず、売買交渉に持って行くためには、やはり普段からの心構えも大切です。
ある程度の高値は目をつぶる
土地には路線化などのいくつかの価格がありますが、一般的な価格となる実勢取引額があり、この価格に沿って地価の算出がされます。しかし、隣地購入の様な半ば個人間取引の様な形態では、この様な実勢取引額は関係の無い額での取引が認められます。
つまり、一般の取引額よりも高値になることが考えられるのです。
この課題に関しては、値引き交渉をじっくりと行うなどの方法も確かにありますが、「高値であっても目をつぶる」という心構えで臨むべきであるとも言うことが出来ます。
隣地の取得には費用が余計に掛かりますが、購入後のメリットはそれよりも大きい…と考えて納得することも大切となるのです。
長期戦になることもある
隣地の必要性を感じて購入を考え始めたとしても、隣の人が土地を手放そうと考えているとは限りません。最初から土地を売る気が無い場合も多いのです。
そのため、隣地購入は長期戦になることもあります。そして、「待つ」ことも非常に大切なのです。待つことが苦手な人もいると思いますが、そこをグッと我慢することが必要です。
いずれにせよ、土地購入のためのモーションを投げかけて、先方が土地売却の意思を固めるには、やはり時間が必要です。期が熟するまで待ちましょう。
近所付き合いを大切に
隣地購入の大前提となるのは、やはり良好な近所付き合いです。そして、これは常日頃から心掛けなくてはなりません。例えば、相手がこちらの態度に気分を害してしまうと、交渉どころでは無くなります。普段から低姿勢にして、隣人との関係に気をつけましょう。
また隣地の購入に成功したとしても、購入後の隣との関係には気をつけ、トラブルを起こさないことが大切です。購入後に気持ち良く生活するためにも、近所付き合いに気を付けましょう。
隣地を買う際に確認すること
隣地購入の交渉はハードルの高い工程と言うことが出来ますが、隣地購入は交渉がすべてではありません。
交渉が上手く行ったとしても、購入前に確認するべきことがあるのです。
所有者を改めて確認する
隣の土地は隣の人の所有となっているとは限りません。他の人の所有である場合もあるのです。ですから、隣地の所有者が本当に隣の人なのかを確認することが必要です。所有の確認は登記簿で可能です。
尚、登記簿での確認は法務局に行ってするほかにも、郵送でも取ることが可能です。また、オンラインで見ることも出来ます。
建築制限について確認する
隣の土地を購入する前に確認しておきたいことに、建築制限がどうなっているかがあります。
例えば、隣地を取得したのはいいが、セットバックの必要があってイメージ通りの増築が出来ない場合があるかも知れませんし、斜線制限などが発生して建物の形まで制限を受ける場合もあるからです。
ちなみに、取得した土地で賃貸不動産を建てる場合、セットバックの有無や斜線制限は、建てようとしていた不動産の規模を小さくすることにも繋がり、利回り低下のリスクをも招きます。
例えば、15部屋の3階建てのアパート建築を計画していたのに、セットバックや斜線制限のために建物の規模を小さくするならば、もしかしたら12部屋まで規模を落とさざるを得なくなることも考えられるのです。
隣地を買う方法
次に、隣の土地を買う方法について紹介します。隣地購入は交渉などにデリケートな部分もあるので、誰かを挟んだ方がいい場合もあります。
他の誰かに買ってもらう
隣地購入は直接的には難しい場合も多いです。そのため、一旦第三者に購入してもらい、その後で取得することもアリです。
尚、他の人に渡る時に価格が抑えられれば、自分で取得するときにもリーズナブルに買うことが可能な場合があります。
ただ、近所付き合いは土地を購入した後でも継続しますので、購入のタイミングなどに注意を払うことが必要です。
不動産会社に一旦買ってもらう
不動産会社にもよりますが土地取引の交渉のプロがいます。そのプロフェッショナルは隣地購入の際にも非常に強力な武器となります。
隣地取得は粘り強い交渉が必要となりますが、土地取引に長けた不動産業者は強い味方となります。ぜひ活用しましょう。
測量士に入ってもらう
測量士に入ってもらうのも1つの案です。と言うのも、測量士は第三者的な立場だからです。
そのため、土地の測量の際に売る気はあるのかの打診をすることが出来ます。
やるべきでは無いこと
次に、やるべきでは無いことについて紹介します。
隣地の売買交渉は、いわばプライベート部分での交渉とも言うことが出来ます。そのため、話を進めるにあたっての注意点もあります。
弁護士を使うこと
交渉の際に弁護士を起用するのは、ある意味において非常に有効な策と言えるかも知れません。しかし、隣地を買う場合の交渉に持って来るのは、あまり得策ではありません。
と言うのも弁護士を連れて来たとなると、相手も身構えてしまって話がスムーズに行かなくなることもあるからです。また、近所付き合いの中でも弁護士が出て来たとなると、あまり格好の良い話ではありません。
焦ること
「急いては事をし損ずる」と言うことわざがありますが、交渉はこれがまさに当てはまると言えます。隣地購入の交渉にも同じことが言え、焦って話を無理に持って行こうとすると失敗する可能性が高くなります。
例えば、土地の話題を出すのがあまりに頻繁になると、相手にウンザリされるのは目に見えていると言えます。そして、それが続くのであれば、相手も怒り出してしまい、交渉が出来なくなってしまうこともあり得ます。
隣との交渉は焦らず、じっくりと進めるのが肝要と言えるでしょう。
損益分岐を度外視した購入
これは、特に不動産投資を目的とした人が注意すべき点ですが、ビジネス上で損益分岐の観点から望ましく無いと判断された場合は、急いで購入するべきでは無く、タイミングを見たほうが良いです。
不動産投資の利回り計算は、収益などを投資額で割って算出されます。そのため投資金額を抑えるのは利回りを確保する上で重要です。ですから、隣地を焦って購入して投資金額が大きく膨らむよりも、待って価格を落ち着かせるのがベターです。
投資用不動産を作るためには、価格を可能な限り抑えることこそが重要と言えるでしょう。
まとめ
隣地購入はメリットの高い買い物ではありますが、普通の買い物の様に費用を出せば購入できる物ではありません。心構えをしっかりと持ち、そして確かな方法を取ることが大切です。
焦らずじっくりと話を進めて、近所付き合いを壊すこと無く購入することが大切と覚えましょう。